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新しい心肺蘇生法の展望:AED(自動対外式除細動器)を用いた救命法

 


  新しい心肺蘇生法の展望:AED(自動体外式除細動器)を用いた救命法


 米国心臓協会が2000年8月に発表した心肺蘇生法国際ガイドライン2000では、一般市民は意識の確認を行い、意識がなければすぐさま救急車を呼び、救急車が到着するまで心臓マッサージだけを行う簡易的な心肺蘇生法に変わりました。

 この背景には、欧米では口対口人工呼吸に対して感染症を恐れる一般市民に抵抗感が増えていることが反映しています。幸いにも、小型軽量の携帯型の自動体外式除細動器(AED)の開発が進んだことから、AEDを用いた5分以内の早期除細動を行うことが可能になりました。

  国際ガイドライン2000では、心臓突然死の救命のためには地域社会全体が救命に参加することを目指し、一般市民が緊急時にAEDを使用するパブリック・アクセス除細動(PAD)を勧告しています。そのためには、空港、駅、スタジアム、デパートなどの人が多く集まる施設に消火器と同様に設置され、訓練を受けた一般市民が早期除細動を行うことができる救命救急体制が求められます。

  AEDは除細動が可能な電位波高の大きい(粗い)心室細動のみを波形認識し、自動的に電気エネルギーの充電をし、使用者はパッチ電極を患者の右前胸部と左側胸部に貼り付け、後は除細動ボタンを押すだけの極めて簡単な装置です。しかも、使用上の手順と注意は音声で指示をしてくれます。

 心臓突然死の原因は心室細動で、心臓の筋肉が無秩序に興奮して心筋がケイレンし、心臓からの血液の拍出がなくなる心停止状態になります。すばやい電気ショック(除細動)を行うことが唯一の最も有効な救命手段です。心停止状態から除細動施行までの時間が1分経過するごとに約10%、生存率が低下すると言われています。
  一般市民が人工呼吸を行わずに心臓マッサージだけを行っても、8分以内に除細動を行えば循環の回復が可能です。この間、脳と心臓への血流は最小限に維持されており、除細動可能な粗い心室細動が維持できるからです。むしろ、慣れない2回の口対口人工呼吸に手間取り、その間、心臓マッサージを中断する方が冠動脈への血液の灌流を減少させ、そのために心室細動波形の波高が減少し、除細動には不利になります。

  2003年4月からは、救急救命士は医師の指示なしで除細動を行うことができ、心停止後8分以内の早期除細動が可能となりました。
  今後、一般市民は心停止患者に対してすぐざま救急車を呼び、救命士が到着するまで心臓マッサージのみを続けるが救命のカギを握ることになります。

 

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