ヘルスケア・プロバイダーが行うAEDを使用したBLS
1.AEDを使用したBLSの手順:“AED First”(図1)
米国心臓協会(AHA)国際ガイドライン2000の中の「Heartsaver AED」訓練に準じた手順を使用した。心停止からの経過時間が判定できる目撃された心臓突然死患者で、病院内で発生し、手元にAEDがない場合を想定した。病院内では心停止後3分以内にAEDを持って来れる病院内のAED設置基準が求められている。 今回の手順(図2、図3)では、メドトロニック社製LifePaK500の音声指示の内容を記載した。日本語による音声指示の内容は、現在、日本で発売されている3機種ともほぼ同様である。
図 3 なお、ホームページ(http://www.hyogohsc.or.jp/)の「健康図書館」に動画と音声による手技の説明を掲載している。 1)意識の確認:すぐさま肩や頬を叩きながら、「大丈夫ですか」と声をかける。 2)意識(反応)がなければ、病院内では、すぐさま「誰か来て!」、「AEDを持ってきて!」と叫ぶ。 3)“循環のサインの確認” 4)“循環のサイン”がなければ、すぐさま心臓マッサージをAEDが到着するまで継続する。 5)AED到着後、すぐさま電源を入れ、「電極を貼り付けてください」の音声の指示に従ってまず、電極(パッド)を右前胸部と左側胸部に貼り付ける。 6)心室細動解析ボタンを押す。 7)心室細動を自動認識した場合に、AEDからは「通電が必要です」の音声指示があり、自動的に電気エネルギーの充電が始まる。 8)充電後、AEDからは「患者から離れてください。通電ボタンを押してください」の音声指示がある。施行者は「患者から離れて」と叫びながら、周囲の安全確認を行い、除細動の通電ボタンを押す。 9)除細動後、除細動が成功したかの心電図自動解析結果を示す音声指示を待つ。 10) AEDから「除細動の必要がありません。脈拍をチェックしてください」の音声指示があれば、再度“循環のサイン”を確認する。 11) 除細動は成功し、心拍が再開しても、呼吸がない場合には、バッグ・バルブ・マスクにより気道確保、人工呼吸、場合によっては補助呼吸を行う。 12) AEDから「脈拍がない場合には、CPRを開始してください」の音声指示が出る。 13)病院内からの救助者が集合した時点から、ACLS(2次救命処置)に移行する。 2.AHA国際ガイドライン2000におけるチェックポイント 心臓突然死は心室細動が原因と想定し、早期除細動を最も有効な救命手段とした救命救急体制を求めた。 心室細動による心停止患者の場合、心停止後の除細動施行までの時間が1分遅れるごとに救命率(病院退院率)が7%から10%減少すると明記した(図4)。
病院内では3分以内にAEDによる早期除細動を行える体制を求めており、救助者が1人の場合を想定し、1分30秒以内(往復3分)にAEDを設置することが求められている。 救助者が2人の場合には、1人がAEDを取りに行っている間、心臓マッサージのみを継続すればよい。 人工呼吸に関しては、患者との口対口人工呼吸は医療従事者の感染(最近のSARSの流行)の恐れもあり、バック・バルブ・マスクを使用した人工呼吸法の習得が不可欠である。 こうした背景から、AHA国際ガイドラインから医療従事者が行うBLS(一次救命処置)の中に、従来、ACLS(二次救命処置)であったバック・バルブ・マスクによる人工呼吸とAEDによる除細動が含まれたことが大きな変更点である。
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