健康ニュース 2001年1月6日送付 発行部数 665 **********************************************************************

<本号の目次>
▼ 新年のご挨拶
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【新年のご挨拶】

・これからの生活習慣病予防のための国民啓発運動は「命の教育」  21世紀がいよいよスタートしました。平成13年からは生活習慣病の予防のための全国的な国民啓発運動が本格的に展開します。兵庫県では県民運動となりました。兵庫県立健康センターでは、平成13年11月1日(木)、2日(金)に淡路夢舞台国際会議場で第23回日本健康増進学会を開催します。この学会を単なる学術集会にとどまらず、健康づくり関連団体が一同に会した生活習慣病予防推進キャンペーンの一大イベントにしたいと考えています。個人参加者も大歓迎です。
 生活習慣病は、遺伝因子、社会環境因子、個人の生活習慣が重なり合って発症するもので予防出来る病気です。しかしながら、生まれてから慣れ親しんだ生活習慣を改めることは難しいのが当然で、心筋梗塞、脳卒中になって死ぬ思いをした人がはじめて真剣に取り組むのが現実です。国のミレニアムプロジェクトの1つであるヒトゲノム研究では、個人の遺伝子解析にて生活習慣病の遺伝子リスクを見出し、個人の責任による病気の予防を目指しています。しかしながら、「命は自分のもの」と思っている人には、生活習慣を見直す動機づけが難しく、病気を治すのは社会の責任(医療保険制度)と思っています。また、この自己中心的な生命感の先には、他人との関わりを避ける「無関心病」という無感情な心が生まれ、ついには社会的な孤独感に陥ります。「生かされている命」を感じて生活している人には、与えられた命を最後の一滴まで使い切る生命力がみなぎっています。この生命力こそが、人間の尊厳であり、健康の泉と考えます。
 心肺蘇生法の普及啓発と同様に生活習慣病予防運動は、命の教育の国民運動です。まず、お互いが気軽に「おはよう」と声を掛け合う環境から新しい「命の文化」が生まれるような気がします。また、そんな社会であってほしいと願っています。

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▼【連載特集】
 「あなたは愛する人を救えますか」-健康づくりは、人づくり-
  兵庫県立健康センター所長   河村剛史

 私はアメリカ留学中の1986年1月23日に経験したフロー・ハイマン選手の突然死のテレビニュースを見るまでは「命を感じる」という感覚はなかった。松江でのバレーボールの試合中にダイエーのフロー・ハイマン選手が控えのベンチの前で突然倒れ、試合が中断されることなく担架にて場外に運び出される光景が放送された時、同じテレビを見ていた多くのアメリカの友人が「なぜ日本人は心肺蘇生法をしないのか」と叫んだ感性が理解できなかった。当時アメリカ人にとって目の前に人が突然倒れた時、すぐさま「大丈夫ですか」と声をかけ、意識がなければすぐさま救急車を呼ぶ心肺蘇生法の手順は当たり前の行為でした。この経験が帰国後に現在まで心肺蘇生法の啓発普及を行っている理由です。日本での心肺蘇生法の普及啓発活動を通じてその普及を妨げているものは,「他人の命」のみならず「自分の命」をも感じない日本人の感受性の欠如ではないかと思うようになった。「大丈夫ですか」と声をかける行為は、命を感じない人にはできない行為です。
 1985年に制定された兵庫県民憲章には「健康は自分が進んで守り、高めるという自覚を持とう」と書かれていますが、健康を意識しない人には関係ないことです。ここに健康づくりの啓発運動の難しさが存在する。健康であることは、生かされている自己の存在を意識し、日々の生きる喜びを感じる心の状態であり、病気であっても、死ぬ時であっても、最後の瞬間まで生きぬく生命力です。
 比叡山延暦寺にて千日回峰行を修めた阿闍梨(あじゃり)の言葉に、「おのれの命を感じる時、生きる喜び」という言葉を聞いたことがある。1日20時間にもおよぶ山中修行中で、意識が朦朧状態になろうとする極限状態において必死に生きようと する自我を意識できたことが「おのれの命」を感じる瞬間であり、今を生きている喜びも感じるのだと思う。「おのれの命」を感じる人には、健康でありたいと願う気持ちが日常生活における健康づくり習慣の原動力であり、日々の生活の中で「今を生きる喜び」が生まれて来るのです。
 2000年4月からは介護保険制度が始まったが、生活習慣病を予防するために「健康日本21」の国民意識啓発運動も同時スタートした。生活習慣病は中高年になって発症するという成人病の考え方から子供の時からの生活習慣が発症原因であり、生活習慣の見直しにより予防可能な病気であるとの考え方に大きく転換された。健康に関する情報は、新聞誌上の定期的な掲載、毎週の健康に関するテレビ番組に溢れており、国民に広く関心を呼んでいます。脂肪過多の食生活、運動不足による肥満、喫煙、社会的ストレスなどが生活習慣病の原因になっている程度の医学知識は充分に国民に浸透している。禁煙運動を例の1つにとってみても、誰しも身体に悪いことは知識としては知っていても喫煙習慣が辞められない人に禁煙を強制することはできない。また、病気になっていない人に「運動するように、脂肪過多の食事は避けるように、塩分は控えめに」と生活習慣病予防キャンペーンを行っても大きな効果は期待できない。なぜならば、自分の命は自分のものと思っている人にとって、自分が何をしようと勝手と思っているからです。
 心肺蘇生法の普及啓発運動と同様に、生活習慣病予防啓発運動は、「命の教育」に根ざしたものでなければ真の啓発運動にはならないと思う。単に生活習慣病を予防するための知識ではなく、「なぜ健康でなければならないか」「健康は与えられたものではなく、自らつくるものである」との心の教育こそが重要です。健康づくりは、地球にただ1つ存在する命(個人)を認識することであり、健康でありたいと努力する行為こそが、社会における個人のあり方であり、人づくりになると思う。

 続く

 バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「健康ネット登録」      http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・宮本武蔵の「五輪書」にも書かれている脊椎ストレッチウォーキング法  水の巻には兵法の姿勢と足の運び方の記述があるが、まさに脊椎ストレッチウォーキングそのものであることに驚いた。「首筋を真っ直ぐに、背筋をしゃんとし、尻を出さず、腰がかがまないように、くさびを締める」「あごは少し出す感じ」「足の運びは、つま先を少し浮かして、踵を強く踏む」などど書かれている。達人の太刀の構えは、不偏不動かつ自由闊達な姿勢、まさにバランスのとれた静止から瞬時に繰り出す自由な動きである。この中で「くさびを締める」とは、帯をひねって腰を締めることであり、お腹を引き締め、胸を張り出すことになる。日々の心がけとして、「日常の身を兵法の身とし、兵法の身を日常の身とする」と書かれており、日常から堂々たる姿勢であることを求めている。兵庫県立健康センターが推奨する脊椎ストレッチウォーキングは、剣術の達人の武蔵が会得した極意の1つである。

・飛行機での長旅では死に至るコンパートメント症候群に注意
 狭い座席に長時間座ったままにいると下半身の静脈内にうっ血が起こり、血液の流れの停滞が静脈内血栓の発生の原因になる。目的地の空港に飛行機が着陸し歩き始めた時に生じた静脈内血栓が下大静脈内に流れ出し、肺動脈内に詰まり肺動脈内血栓症を発症する。突然の呼吸困難から循環不全に陥り、死に至る最重症の救急疾患である。予防法は、飛行機内でも定期的に歩いて、もしくは足首の背屈運動による筋肉ポンプにより静脈うっ血を取る。夜間の脱水を避けるために水分を十分に取り、むしろトイレに頻繁に行く方が安全である。ペットボトルを持参するなら、血栓を予防するマグネシウムを含んだ深層水ボトルをお勧めする。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・2001年の健康センター主な行事予定
 3月 兵庫県健康づくり関連施設連絡協議会の発足
 4月 脊椎ストレッチウォーキング大会(4月15日or22日実施予定)
 8月 第2回兵庫県医師会健康スポーツシンポジウム(8月23日実施予定)
 9月 心肺蘇生法500人講習会(9月9日実施予定)
 11月 第23回日本健康増進学会(11月1日、2日実施)
 11月 脊椎ストレッチウォーキング大会(11月2日実施)

・健康センターのホームページの内容を充実
 掲示板には生活習慣病予防の考え方などの所長の講演内容の掲載、施設予約ではインターネットによる施設利用予約、パーソナルメンバー、ダイエットメンバーについての紹介、健康ネットには好評の「あなたは愛する人を救えますか」のバックナンバーを掲載しています。
 http://www.hyogohsc.or.jp/ をご覧下さい。

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▼【兵庫県内の話題】

・16歳男女のタクシー運転手強盗殺人事件  2人で共謀して金銭目当ての強盗殺人事件である点が97年の神戸市の児童殺害事件からの一連の少年凶悪事件とは異なる。単独犯行の場合にはその凶悪性から精神鑑定がよく取りざたされるが、今回の事件は男女2人が計画的に行った犯行である、世間一般の強盗殺人事件の年齢が16歳前後まで低年齢化したことは一段と深刻な社会問題である。21世紀の日本の最大の課題は、新しい「命の文化づくり」を如何に行うかにかかっている。

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▼【兵庫県外の話題】

・平成12年度の日本の喫煙者率調査結果  日本たばこ産業(JT)が毎年行っている喫煙者率調査(成人男女11,059人のアンケート結果)では、男性喫煙者は53.5%、女性喫煙者は13.7%で、5年連続の減少が見られた。年齢別で喫煙率が最も高いのは、男性は30代で63.4%、女性は20代の21.9%で、いずれも高齢になるほど喫煙率は落ちている。なお、喫煙者率のピークは1966年(昭和41年)で、男性が83.7%、女性が18%であった。  喫煙が心筋梗塞、肺癌の危険因子であることは間違いない事実である。生活習慣病予防の最も効果的な国民啓発キャンペーンは禁煙運動で、大学病院も含め公共施設内の施設禁煙が当面の目標と考えている。

・IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)が平成13年1月6日より施行
 超高速ネットワーク基盤整備、電子商取引、電子政府の実現、人材育成の強化の政府目標にむけて実行されます。野村総合研究所が発表した2000年のインターネット個人利用率国際比較では、スウェーデン60.7%、アメリカ48.9%に対して日本は 22.8%で、韓国よりも低い。政府はインターネット接続料金の低料金化を1年以内に実現するとしており、iモード接続(現在6.6%)の増加から日本でもこの1年の更なる急速なインターネット人口の伸びが期待される。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人610件、団体55件の合計665件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールにてご連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
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