健康ニュース 2001年2月9日送付 発行部数 704
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い
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▼【TOPニュース】

・第23回日本健康増進学会の開催に向けて-「集団から個人、個人から家族、家族から次世代へ」
 平成13年11月1日、2日の両日に開催予定の第23回日本健康増進学会の学会長を兵庫県立健康センター所長河村剛史が引き受ける事になりました。平成12年度から厚生省(現厚生労働省)の健康づくり指針「健康日本21」10ヵ年計画がスタートし、本学会は各地域での取り組みを討論する絶好の場となります。また、平成13年度は兵庫県立健康センターにおきましても創立20周年目の記念すべき年度でもあります。
 20数年前にスタートした国の健康づくりの基本概念としての健康増進の普及啓発は、国民に健康づくりの大切さの意識を高め、生活環境の向上、医療技術の進歩とあいまって世界一の長寿国となりました。しかしながら、21世紀の少子高齢社会において「生きがいのある生涯現役長寿」を目指すには従来の「生命長寿」から「健康長寿」の新しい概念に基づいた健康づくりが求められております。さらに生涯現役社会の実現には急増する生活習慣病予防対策を包括的に行う新しい生活習慣病予防センターの設立が求められます。
 21世紀の初頭にふさわしく、淡路夢舞台国際会議場から健康づくりの夢「健康づくりは人づくり、国のいしずえ」を発信したいと思います。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」-勇気をほめたたえる社会環境づくり
 兵庫県立健康センター 所長
  河村剛史
 心肺蘇生法の実技講習会では、最後の30分間に「今、あなたの愛する人が目の前で倒れました。さあ、どうしますか」と参加者に叫び、参加者全員の前で一人ずつ心肺蘇生法の実技をやってもらうことにしている。参加者同士、和気あいあいと練習している時は何とか順序を間違わずにできても、いざ人前でやれと言われた時、前に出ていくには勇気がいるものである。
 平成2年当時、校内暴力が絶えなかったある高等学校の新入生オリエンテーションに心肺蘇生法を教えに行った。講習会の終わりに、200人が一体の練習用ダミー人形を取り囲む円陣の中、「友だちが倒れた。救うのは誰か」と叫んだ時、即座に人形に飛び込んで行ったのは3人の生徒のみであった。一人は先生方が当然助けに出ていくだろうと期待されていた生徒であったか、もう一人は以前から問題のあると思われていた生徒であり、この意外性に先生の方が驚いた様子であった。この時、私は「人間には学習能力、運動能力には差はあっても、勇気は一人一人に平等に与えられている。みんな勇気あるこの3人を心からほめてあげようではないか」と言った。ともすれば生徒を一定の尺度で評価しがちな現在の学校教育の中で、もっともっと勇気のある行動をほめたたえる環境が必要ではないだろうか。3年間毎年、新入生に心肺蘇生法を通して人の命を救うことを教えたが、校内暴力が無くなったのはいうまでもない。
 「福祉の心とは何ぞや」。この言葉は貝原兵庫県知事に心肺蘇生法の県民普及のもう1つの目的を説明した時、申し上げたものである。福祉の心とは、人の命の尊さを知る心である。人の命の尊さは、言葉で教えられるものではなく、人の命を意識し心肺蘇生法を学べば、体験学習の中で感覚として人間の心の中に浸透していくものである。
 目の前で人が倒れた時、思わず反射的に一歩ふみ出し「だいじょうぶですか」と言えるのが、もうすでに福祉の心を身につけた人である。ドアを開ければ後に入ってくる人がいないか、後を振り向く心遣い反射運動である。アメリカでは、人と目があえば思わず「ハイ」と声をかけることも、人とすれちがう時に身体が触れないように歩き、少しでも身体が触れたら「すいません」と言う習慣も無意識に行う反射運動である。
 日本では人の好意に対してあまりにも感謝の言葉を言い過ぎるように思われる。電車やバスに高齢者が乗ってきたら、何も言わずに反射的に席をたてる人が自然である。感謝の言葉を相手から聞いていい事をしたと思う人は、相手と自分とが平等の立場でないことに気づくべきである。相手から感謝の言葉を期待するのではなく、活動そのものに喜びを感じられなければ真のボランティア活動とは言えない。
 「命を大切に、あなたも心肺蘇生法を」。兵庫県は平成2年度から心肺蘇生法の普及県民運動を5年計画で展開し、目標の100万を越える108万人の講習を達成することができた。これは突然死に対する救命率を上げるためだけでなく、お互いの命を守るには県民一人一人の社会参加が必要である。21世紀の少子高齢社会を迎えて、われわれ一人一人の命に対する意識革命がますます必要になってきている。
 続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・血液が「ドロドロ、サラサラ」であることの意味
 血液が血管内を流れるよう様子を表現したもので、一般によく使われています。血液は血漿成分と血球成分に分けられ、血球成分は45%の容積(ヘマトクリット)を占めています。血球成分の中には、赤血球、白血球、リンパ球、血小板があり、血漿成分は水と電解質と蛋白質からなっています。最近、シリコン基板に作成した毛細血管を模した間隙(6ミクロン)を血液が流れる様子を直接見る血流流動性測定装置が開発され、流れの様子から血液がドロドロかサラサラかを見ることができるようになりました。生体内でも直径8ミクロンの赤血球が6ミクロンの毛細血管内を細長く形を変形して流れています。高中性脂肪血症、糖尿病、喫煙、脱水状態の場合に、血液が流れが悪いドロドロ状態になり血栓ができやすくなります。その結果起こる心筋梗塞、脳梗塞を予防するには、逆に血液をサラサラにする日頃の注意が必要です。そのためには、脂肪を燃焼させる有酸素運動にて血液中の中性脂肪を燃やし、糖尿病の方はヘモグロビンA1c(変形しない赤血球そのもの)を6.5%以下を目標とすることが予防になります。日頃の注意は、脱水により相対的に血球成分が多くなり、流れにくくなりますので、夜寝る前の100ccの深層水(マグネシウムを含んだ)を始め、朝食は必ず取る時間的余裕が求められます。
 兵庫県立健康センターでは、血液の流れを測定し、健康指導に使っております。1月31日に生出演したテレビ大阪「満点!アイ」では、予防法として玄米食、マグネシウム、脊椎ストレッチウォーキングを中心に話をいたしました。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・第23回日本健康増進学会のトピック
 日時:平成13年11月1日(木)午後14:00?17:00
 場所:淡路夢舞台国際会議場
? シンポジウム:「生活習慣病と健康長寿文化」
 基調講演:杉村 隆 国立がんセンター名誉総長
 シンポジスト:
      渥美和彦東大名誉教授
      家森幸男教授(京都大学大学院人間環境学研究科)
      久常節子教授(慶応義塾大学看護医療部看護科)
 座長:河村剛史(兵庫県立健康センター 所長)
 21世紀の幕開けにふさわしいシンポジウムを開催いたします。 一般参加も受け付けます。詳しい内容はホームページ(http://www.hyogohsc.or.jp/)の学会予定をご覧下さい。

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▼【兵庫県内の話題】

・平成13年度から健康づくり県民運動がスタートします。
 厚生労働省の「健康日本21」を受けて兵庫県で作成した「ひょうご健康づくり県民行動指標」を県民に広く普及啓発する健康づくり県民運動が平成13年度からスタートします。兵庫県立健康センターでは、行動指標の1つである「毎日歩こう 背筋を伸ばして 今のあなたに もう1000歩」の意識を醸成するために「脊椎ストレッチウォーキング」を兵庫県のみならず全国に普及啓発したいと意欲を燃やしています。脊椎ストレッチウォーキングの習慣化は、「自立自尊」の長寿者の道です。

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▼【兵庫県外の話題】

・国会にも取り上げられた新大久保駅の“勇気の死”の波紋
 1月26日の夜にJR山手線新大久保駅で線路に転落した男性を助けようとした韓国留学生李秀賢さん、日本人カメラマン関根史郎さんの巻き添え死亡は、“無私の行為”、“勇気の死”、“善意の死”として日韓の故郷を超え、国民に大きな命の感動を与えた。青少年の凶悪犯罪、世田谷の一家惨殺事件など凶悪な殺人事件が多発している昨今、命を救おうとする行為の中に、忘れかけた人間の無償の善意を感じるのである。今回の「あなたは愛する人を救えますか」に取り上げた、ある高等学校の心肺蘇生法の講習会で、3人の高校生がとっさに飛び込んだ光景を思い出しました。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人649件、団体55件の合計704件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールにてご連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
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