健康ニュース 2001年8月4日送付 発行部数 809
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い
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▼【TOPニュース】
・新しい救命戦略:医師が携帯する半自動除細動器(AED)
兵庫県医師会は医師が携帯する半自動除細動器(AED)を共同購入し、健康スポーツ医を中心とした医師会員を対象に心臓突然死に新しい積極的な医師の関与した救命戦略の普及啓発をスタートしました。兵庫県各地で開催されているロードレースやマラソン大会は60ヶ所で約10万人の参加者があり、参加者の心臓突然死が散見されます。競技中の死亡の80%は心筋虚血による心室細動による心臓突然死であると言われており、4分以内に現場での早期除細動により60%前後の救命が可能になります。
2002年6月にはワールドサッカー神戸大会、2007年には兵庫国体が予定されており、兵庫県医師会健康スポーツ委員会が中心となって医師が現場で除細動を行う新しい救命救急体制を提案するものです。
詳しくは、ホームページ http://www.hyogohsc.or.jp/ の掲示板をご覧ください。
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▼【連載特集】
「あなたは愛する人を救えますか」−命は誰のもの−
兵庫県立健康センター所長
河村剛史
中学校の講演では、最初に中学生に「あなたの命は誰のもの」といきなり質問をすることにしている。「自分のものと思う人は手を上げて」と言うと、半数の生徒は「自分のものに決まっているじゃないか」と言わんばかりに手を上げる。一部の生徒は「親のもの」、「神のもの」に手をあげたが、残りは「分からない」との反応であった。
人間はいつ頃から「死の意味」を理解するようになるのか。いじめによる小学生や中学生の自殺は「死の意味」を知っての行為とは思えない精神的未熟性がある。かって働いていた東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所で、心肺停止から蘇生した小児の心臓病患者が病棟で何もなかったかのように平気で遊んでいることに驚いた記憶がある。以前にもQT延長症候群の中学生のことを紹介したが、小学生の
時にも何度か心停止が起こり蘇生したが、中学一年生の時の心肺停止からの蘇生後にはじめてこの病気で死ぬ恐ろしさを知った。こうしたことから、精神発育過程の中で「死の意味」を頭で理解できるようになるには中学生以後ではないかと思っている。アメリカでは心肺蘇生法の最初の教育が中学校1年生に行われているのもうなずける。
欧米社会ではキリスト教が精神文化の根底にあり、「人間の誕生と往生に対して究極的な責任はない。人間には誕生と往生の間に位置する人生に対して二次的な責任がある。人間は人生において生きることを通してのみ死に向かう。」と教えている。幼少期から「命は神から与えられているもの。生かされた命」と教えられている国民には、殺人も自殺も神に対する罪の意識がある。
日本では儒教精神が根底にあり、貝原益軒(1630-1714)の有名な「養生訓」の一節には、「人の身は父母を本とし天地を初とす。天地父母のめぐみをうけて生まれ、又養はれたるわが身なれば、わが私の物にあらず。天地のみたまもの(御賜物)、父母の残せる身なれば、つつしんでよく養ひて、そこなひやぶらず、天年を長くたもつべし。」と書かれており、要約すれば「人の命は天から授かった、父母が残したもので、自分のものではないので、命を粗末に扱ってはいけない。」と述べている。自分の命は親から授かったものだから、感謝の心をもって親に孝行を尽くし、そのために自分の命をささげなければならないという忠孝の精神が強調された。忠孝のためには自分の命をささげることが美徳とされ、自分の死に対して究極の責任(死の決定権)を求めたことがキリスト教との相違である。中国に起こった文化大革命の嵐の中で、濡れ衣を着せられた多くの人が身の潔白を証明するために自殺したことも理解できる。
戦後に行われた民主教育にて、特攻隊まで生み出した戦前の日本人の精神構造が否定され、高度経済成長や世代交代が進む中で、戦前の命のより所であった忠孝の精神が薄れ、「自分の命は自分のものであり、誰にもとやかく言われない」勝って気ままな自己中心的な精神だけが残った。基本的人権は、われわれに与えられた「権利」であるが,われわれはお互いの権利を守る「義務」も課せられている事を
知らなければいけない。今、宗教的な思想教育のない日本人に対して「命の教育」に真剣に取り組まなければ、ますます他人の命に無関心な、孤独な社会が誕生することになる。心肺蘇生法の普及啓発は、お互いの命を意識し、「お互いの命を守る社会づくり」の共通理念を醸成する最も有効な教育手段である。
続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。
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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】
・熱中症対策はこまめな水分補給、特にミネラル補給が大切
今年の夏は猛暑が続き、各地で熱中症による死亡事故が多発しています。もともと人間には体温を一定に保つ機構があり、全身の皮膚は熱放散のための自動車のラジエーターの役目をします。熱の放散が追いつかない場合には、発汗による汗の蒸発熱により体温を下げます。熱中症がもっとも起こりやすい条件は、暑い外部環境下で肉体労働、スポーツにより体内のエネルギー消費により過度の熱産生が加わった状況です。その本態は、身体からの水分の喪失が起こり、脱水による循環血液量の減少と血液粘度の増加、ついで起こる細胞内脱水で、最終的にはうつ熱による血液凝固による多臓器不全が起こり死に至ります。
熱中症の早期診断は、本人からの気分が悪いと言う訴えが脱水症状の始まりです。夏場には常に熱中症を念頭においてお互いに気をつける危機管理教育が必要です。なりよりも予防が大切で、猛暑下のスポーツや肉体労働は避けるべきですが、やむをえない場合には20分毎に水分補給をこまめに行う必要があります。高齢者は身体の水分量が40%と壮年者の60%よりも少なく、暑さに弱い身体になっています。
水分補給で 気をつけなければならない点は、市販されているミネラルウォータにはミネラルがほとんど含まれておらず、水分補給が充分でも体液のミネラルバランスを崩す恐れがあります。通常ではナトリウム不足にはなりませんが、夏場は特にマグネシウム不足になります。水分を摂り過ぎて夏バテしやすいのは、マグネシウム不足です。脱水による血液粘度が増加し、ドロドロ血にならないための予防には深層水(マグネシウムを含んだ)をお勧めします。
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▼【兵庫県立健康センターの話題】
・心肺停止患者に対する緊急時対応のシュミレーション訓練の実施
兵庫県立健康センターの心肺停止患者発生時の緊急時マニュアルは、患者発生場所への職員が全員集合することを基本行動としています。心停止患者目撃者は、意識の確認をし,意識がなければ事務所に通報します。事務所職員は救急車要請と緊急全館放送にて職員に発生場所を知らせます。各専門スタッフはすべての業務を中断し、途中、館内3ヶ所の救命機器設置場所からバッグマスクと携帯型半自動除細動器(AED)を持参いたします。救急車が到着するまでの救命処置は、専門スタッフによるバッグマスクによる人工呼吸と心臓マッサージを行い、医師である所長が早期除細動を行い、到着した救急車をドクターカーとして転用する体制をとっています。
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▼【兵庫県内の話題】
・第48代兵庫県知事に井戸敏三氏前副知事(55歳)が当選
11年続いた貝原俊民前知事の県政の後継者として兵庫県の全地域で過半数以上の得票(140万票)を獲得し、県民は貝原県政の継承発展者を選択致しました。8月1日から新体制がスタートしました。井戸新知事は、兵庫県立健康センターが提唱する脊椎ストレッチウォーキングの実践者で,平成13年度からスタートした健康づくり県民運動の大いなる展開を期待しています。
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▼【兵庫県外の話題】
・厚生労働省の2000年簡易生命表の発表:男女とも世界一の長寿
日本人の平均寿命は、女性84.62歳で、第2位はスイスで82.5歳(98年)、男性は77.64歳で、アイスランドの77.5歳(98‐99年)を抜いて男女とも世界一になりました。
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