健康ニュース 2001年9月7日送付 発行部数 829
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い
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▼【TOPニュース】
・心肺蘇生法普及500人講習を9月9日午後13:00から15:00まで開催いたします。
兵庫県立健康センターの毎年の恒例行事になりました。7月21日のJR朝霧駅の歩道橋事故、9月1日の歌舞伎町の火災事故など予期せぬ事故が起こっています。日本人は「水と空気と安全はただ」と思っており、命の危機意識が乏しいのが一般的です。身近な家族に起こる命の危機は、自らが家族を守る心構えが必要です。この機会に、親子で講習会に参加して、命を救う心肺蘇生法の行為の中に「命の教育」があることを子供に教えてください。当日参加も受け付けます。参加費用は無料です。
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▼【連載特集】
「あなたは愛する人を救えますか」−危機管理、心と心を結ぶもの
兵庫県立健康センター所長
河村剛史
9月1日は防災の日である。78年前のこの日に14万人が亡くなった関東大震災が発生した。阪神淡路大震災では震災に対する危機管理体制の不備が問われ、それを契機に各自治体における危機管理体制の見直しがなされた。次は東海・南関東直下型地震マグネチュード8を想定した危機管理体制の万全性が試されている。
平成13年7月21日夜の花火見物に押しかけた明石市JR朝霧駅前の横断歩道橋で起こった明石歩道橋事故は、歩道橋に6,000人が一度に殺到し、11人の圧迫死者、負傷者139人を出す大惨事となった。事故直後には、無謀な若者が煽り立てた群集パニックが原因と報道された。その後、警備を受け持った民間警備会社が責任回避のために虚偽の報告をしたことや、警察が事態の重大性を把握できなかった危機意識の甘さ、事故発生後の救急体制の遅れなど次々と明るみになった。
今回の事故の特異的な点は、明石市役所や明石警察署および警備会社に対して危機管理体制の不備による業務上過失致死傷の責任が追及されていることで、危険回避が可能な複合人災であった。阪神淡路大震災の教訓が生かされていなかったことに日本人の安全管理と危機管理に対する基本的な意識の欠如を感じる。
この事件のもう一つの際立っていたものは、極限状態に置かれた人間が自分を守ろうとする自己防衛だけではなく、弱い幼児、子供、老人を守ろうとする人間同士の助け合いの姿であった。当初、無謀な若者と報道されていた真実の姿は、橋の屋根格子に登って助けを求めたり、群集を誘導したり、息が出来なくなりぐったりとした子供を引き上げたりした善意の行動であってパニックを煽ったものではなかった。人間の超過密による酸素欠乏状態が起こり、意識が遠のいて行く中、周りからの圧迫から子供を必死でかばおうとしていた人、赤ちゃんを高く持ち上げた人、ほとんど身動きが取れない中、亡くなる直前まで近くにいた生後2カ月の男児を必死に守っていた71歳の女性などの姿があった。救急車が到着するまでの間、多くの市民が自主的に人工呼吸や心臓マッサージを懸命に行う光景が随所で見られた。居合わせた医師も加わっての応急措置で一命を取り止めた幼い子供もいた。
イベント時の観客の命を守るには、安全管理体制と危機管理体制の両面が必要である。日本では危機管理という言葉は阪神淡路大震災の頃からよく言われるようになった。今回の事故をみると、不備ではあったが事前に協議されたのは事故防止のための警備(安全管理)体制のみで、事故発生を想定した危機管理体制はなかった。常設の救護センターにいたのは、看護婦一人で、市消防との具体的な協議はなく
、現場に待機していたのは花火による火災警戒での消防車と工作車を配置しただけで、救急車はなかったことからも明らかである。まだ、事故発生から負傷者の通報がありながら、20分間も情報確認に手間取り、救急車が現場到着したのは事故発生から40分も経過しており、救急初動にも問題があった。
心肺蘇生法は命の危機管理教育で、目の前で突然人が倒れた時、まず何をすべきかのすべての人に共通の救命行動マニュアルなのである。心肺蘇生法による救命行為には、単に心肺蘇生法を行うだけでなく、正しく行われているか見守る人、救急車を呼ぶ人、救急車を誘導する人、激励する人など、一人の命を救おうとする多くの人の助けが必要である。
阪神・淡路大震災を経験した消防の救急隊員が絶句するほどの混乱の中で、呼吸停止、心肺停止した幼児や子供に対して多くの一般市民が迷わず心肺蘇生法を行った救命活動の姿が群集のパニック心理を治め、さらなる混乱を静めたものと思う。人間の危機に際し、心肺蘇生法は見知らぬ人同士を"救命の心"でつながった"心の架け橋"であり、瞬時に大きな力の結集を呼び起こした。
続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。
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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】
・血中遊離脂肪酸濃度の増加は心臓突然死の原因となる。
以前から動物実験にて血液中の遊離脂肪酸が増加すると不整脈がおこることはよく知られていましたが、最近のアメリカの循環器専門雑誌の「Circulation」にフランス人5.250人を22年間経過観察を行い、血中遊離脂肪酸濃度の高い人ほど心臓突然死が多く発生しているとの疫学調査が発表されました。フランス人は心筋梗塞の少ない国民で、赤ワインのポリフェノールが抗酸化食品として冠動脈硬化を防いでいると言われていますが、心筋梗塞以外にも遊離脂肪酸による不整脈の原因も考えられます。以前にも紹介した過労死、心臓突然死の予備軍と言われている“死の四重奏”(上半身肥満、高中性脂肪血症、糖代謝異常、高血圧)の病態は、内臓脂肪の蓄積と言われており、内臓脂肪細胞から血中に大量に流入する遊離脂肪酸が心臓突然死の原因である疑いが濃厚になってきています。内臓脂肪を蓄積しないように、毎日、定期的な脂肪を燃焼させる有酸素運動を行うことがやはり最大の予防法で
す。
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▼【兵庫県立健康センターの話題】
・第2回兵庫県医師会健康スポーツ・シンポジウムは好評でした。
平成13年8月23日(木)午後14:00〜17:00にコープこうべ生活文化センター大ホールで開催いたしました。健康スポーツ医との新たなパートナーシップを求めて、スポーツ関連施設およびコ・メディカルスタッフに広く呼びかけましたが、 当日の参加者は289名で、医師123名、運動インストラクター68名、学校関係者40名、栄養士29名、保健婦10名ほかで、多彩な顔ぶれの参加を得ました。
講演1の「生活習慣病と体質改善」(河村剛史 兵庫県立健康センター所長)では、人間の40兆個ある細胞の細胞膜のリン脂質の構成脂肪酸から脂質メディエーターが産生される機序の説明があり、なぜ、3価不飽和脂肪酸の摂取が重要であるかが述べられた。講演2の「スポーツ障害を未然に防ぐ予防対策」(松本 学 宝塚市立病院 整形外科部長)では、学童期からの健康スポーツが、障害スポーツにならないための関節障害の予防知識を指導者は持つことの重要性が述べられた。
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▼【兵庫県内の話題】
・兵庫県難病連主催第45回「医療・生活・教育」無料相談会開催のご案内
日時:平成13年9月16日(日) 13時〜16時
場所:西脇市民会館(0795−22−5715)
西脇市健康づくりセンター(0795−22−3111)
西脇健康福祉事務所(0795−22−2666)
内容:難病患者・家族の皆さんに日頃の医療面、生活面、教育面での悩みの相談に県下の著名な先生方に直接お答えいただきます。
料金:無料
主催:兵庫県難病団体連絡協議会
問合せ先:兵庫県難病団体連絡協議会 TEL(078−322−1878)
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▼【兵庫県外の話題】
・文部科学省「たんぱく3000プロジェクト」が次年度からスタートします。
人間の全遺伝子の塩基配列が解明され、21世紀はその塩基配列による遺伝情報を解読する「ポスト・シークエンス」計画が本格化する。このプロジェクトはその一環で、DNAを基に作られる体内で重要な役目を果たす3000種類のたんぱく質の立体構造と機能を、5年計画で解明しようとするものです。日本は理化学研究所ゲノム科学総合研究センターが中心となってたんぱく質の立体構造の解析では世界をリードしております。いよいよ兵庫県播磨科学公園都市にある大型放射光施設「スプリング8」が立体構造解析に大きな力を発揮する時節到来です。生体の一連の反応は、たんぱく質を介して行われ、病気はその一連の反応の変調と見ることができ、病気の革新的な治療法の開発に大いに期待されます。
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このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人772件、団体57件の合計829件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
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兵庫県立健康センター
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