健康ニュース 2001年12月22日送付 発行部数 900
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・「21世紀の健康ビジョン」のインターネットによるオンディマンド発信を平成14年1月に予定しています。ご期待ください。
 第23回日本健康増進学会は1954人の参加を得て、大成功に終わりました。本学会の特徴として、学会期間中の教育講演,基調講演、シンポジウム、学会長講演、オーディオ・ビジュアル・セッションなどすべての内容をインターネットによるライブ中継を行い、日本語による全世界同時発信を行い、学会の公開性による社会啓発を行いました。各方面からの再発信の要望が強く、渥美和彦東京大学名誉教授
「21世紀の医療のすがた:統合医療」、久常節子慶応義塾大学看護医療学部教授「生活習慣病と保健婦活動」、家森幸男京都大学名誉教授「生活習慣病と世界の食文化」、杉村 隆国立がんセンター名誉総長「生活習慣病と健康長寿社会」、河村剛史学会長「長寿の道は、自立自尊」など2001年に21世紀に向けて語った健康ビジョンを後世のデジタル社会に発信し続けたいと考えております。

 現在調整中で一部アドレス、内容の変更、また予告なく配信を停止する場合がありますが、早速ご覧になりたい方は下記アドレスにアクセスしてみてください。
http://www3.stream.co.jp/web/imageone/e-pre/kawamura/start.html
http://www3.stream.co.jp/web/imageone/e-pre/atsumi/start.html
http://www3.stream.co.jp/web/imageone/e-pre/hisatsune/start.html
http://www3.stream.co.jp/web/imageone/e-pre/yamori/start.html
http://www3.stream.co.jp/web/imageone/e-pre/sugimura/start.html

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▼【連載特集】
「あなたは愛する人を救えますか」−アメリカで学んだ緊急時のパニック・コントロール
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

 私が1985年9月にカルフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医療センターに胸部外科スタッフとして就職した時、大学事務局からの採用に当たって多くの書類にサインしなければならなかった。この中で、CPRカードのコピーの提出が求められていた。アメリカでは、公的機関に勤める職員には毎年CPRカードの提出が義務づけられていた。当時の日本では、心肺蘇生法を修得した証明書は日本赤十字社の講習会受講後の証明書があったのみで、大学当局に問い合せたとこところ、CPRカードはアメリカの心臓協会(AHA)の発行のものでないと駄目と言われ、CPRカードはアメリカで取得することとした。
 アメリカには仕事の準備も兼ねて8月に出発した。早速、書類関係を仕上げるために大学事務局を訪れたところ、午後にアメリカ心臓協会(AHA)のCPRの試験があるので大学のAHA事務局に行くようにとの指示があり、何も分からぬまま事務局に行った。事務局では、日本の心臓外科医なのでCPRテクニックはOKと思うので午後のCPR試験を講習会なしに受けてくださいとAHAのCPRガイドブック(Basic Life
Support)を受け取った。CPRガイドブックの内容は、成人、子供、幼児に分けて手順が詳しく書かれており、東京女子医大での心臓手術後の心停止患者に行っていた救急のABC手順(日本での知識はこの程度)とは比較にならないものであった。
 初めてCPRカードを取得するには、講義を受けた後に設問試験があり、50問の設問の内、85%以上の正解者が実技試験を受けられることになっている。いきなり設問試験を受けたとはいえ、日本の心臓外科医が不合格では国の恥と緊張したが、幸いに常識問題で安心した。次に実技試験になって、非常に驚いたことは、20人ほどの受験者(UCSD医療スタッフ)が一人づつ参加の前で訓練人形を使ってCPRガイドラインに書かれている手順通りに声を出しなら行うことが出来るかテストされた。まさか、書かれている手順通りにやらなければ合格できないとは思っておらず、最後尾に移って自分の番になるまで前の人のやり方を必死に覚えてどうにか合格することができた。アメリカでの最初で最後の緊張した思い出である。
 心臓外科医という仕事柄、日常業務で遭遇する病院内の心停止患者に対しては従来から言われている救急のABC手順で問題はなく、むしろ救命に自信もあった。しかし、一般市民が始めて心臓突然死患者に遭遇した時、まず、パニック・コントロールが必要である。パニックの発生の原因は、その場に居合わせた人達がバラバラで、無統制の行動を行う場合である。100人が100人とも同じCPRを修得しておれば、その場で統一された行動パターンが瞬時に生まれ、パニックの発生を抑えることになる。
 CPRの手順は頭で理解することではなく、身体で覚えることである。当時の日本では、やり方を言葉で教えることが多く、実際に訓練人形を使ってやってみる訓練法は、訓練人形の絶対数の不足もあり行われていなかった。アメリカで学んだCPR手順を一連の動作として身体で覚える方式は、日本に帰ってスポーツウェアを着て、スポーツ感覚で講習会を行った理由である。CPR練習には訓練人形一体につき、10人の受講者単位で行うことが重要である。お互いに声を掛け合い、実施者が間違っている時には声で注意しあい、気軽に練習が出来る明るい、笑い声が出る明るい雰囲気づくりも大切である。実際の救急現場では、より熟練したCPR修得者が積極的に交代することが求められる。
 講習会の最後には、人形一体を中心に円陣を組み、一人づつ前に出てCPRを行い、救命に飛び出す勇気を試す機会にもなる。また、CPRを知らなくても、助けようと大声で助けを呼ぶ人間愛を訴え、完全にCPR修得していなくても、次なる救命者のリレーする役割の大切さを訴える。その場のすべての人が一致団結して救命に当たる環境づくりがもっとも有効な救命手段である。

 続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・「正月のお酒はほどほどに」:適度のアルコール飲酒は虚血性心疾患の発生を減少させます。
 生活習慣と虚血性心疾患の調査研究で世界的に有名なフラミンガム研究において飲酒習慣に関する研究結果が循環器専門雑誌「Circulation」に発表されました。
 アルコールと血液検査との関連では、アルコール飲酒量が増えるにつれ、動脈硬化を防止する善玉コレステロール(HDL)が増加し、血液を固まりやすくする血液凝固因子を減少させ、血液をサラサラにし、心筋梗塞を予防します。しかし、過度の飲酒では、逆に血液を溶かす線溶系の障害が起こり、逆に血栓形成の原因となり、心筋梗塞の発生を高めます。学問的に適量というのは、週にビール缶(350cc)を3缶から7缶程度、日本酒であれば、1日1合程度になります。ワイン、ウイスキー、焼酎でも種類の差はありません。
 最近有名になった長時間の飛行機内でおこるエコノミークラス症候群(肺動脈血栓塞栓症)の予防には、飛行機内での水分補給(マグネシウムを含んだ深層水が有効)を充分にして、定期的なトイレ歩行をすれば予防できますが、水分補給のつもりでアルコールを飲みすぎるのは血液を固まりやすくして逆効果になります。
 正月を迎えて、どうしてもお酒の飲みすぎになりますが、自己診断法としては心拍数の増加(100/分以上)、血圧上昇があれば飲み過ぎの危険信号です。くれぐれも、一度に飲み過ぎないように注意してください。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・第23回日本健康増進学会での基調講演、教育講演などをCD-ROM化し、実費頒布する予定です。
 インターネットにてライブ中継した講演内容をCD-ROMにまとめました。21世紀の新しい健康ビジョンについて、渥美和彦先生には統合医療、久常節子先生には保健婦の健康づくりの取り組み方、家森幸男先生には世界の食文化から見た生活習慣病の疫学研究、杉村 隆先生にはがん予防対策の13ヶ条、河村剛史学会長には「長寿の道は自立自尊」について各1時間講演を講演映像と同期したスライド内容を講演者自身の声で説明いたします。実費頒布料金は3000円(送料込)程度を予定しています。最新のストリーミング技術を取り入れた未来型CD-ROM教材としても一見に値するものと確信しています。

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▼【兵庫県内の話題】

・兵庫県医師会は医師会員に対して半自動除細動器(AED)の共同購入の呼びかけを行っています。
 心臓突然死は心室細動という不整脈が原因で起こり、心臓からの血液の拍出がなくなり心停止状態になります。心停止の発生から4分以内に心肺蘇生法にて脳に血液を送らなければ脳細胞が致命的障害を受け脳死にいたります。しかし、4分以内の心肺蘇生法に次いで、8分以内に電気的除細動を行えば40%の人の救命が可能であり、3分以内に除細動が出来れば80%の人の救命が可能となります、まさに時間との勝負であり、今、世界では、3分以内の除細動を可能にするために、救急救命士の到着まで一般市民が小型携帯型半自動除細動器(AEDと言う)を使用する救急救命法が広く行われる動きがあります。日本においては、除細動器の使用は医師と医師の指示を受けた救急救命士にしか認められていません。
 兵庫県医師会では、健康スポーツ医学委員会(河村剛史委員長)が中心となって医師会員がAEDを積極的に購入し、兵庫県下での各種スポーツイベントの参加者の命の危機管理体制を作る社会啓発運動を展開しております。当面の目標は、300台のAED購入を目指しており、2002年の神戸のワールドカップ、2007年の兵庫国体に向けてのAEDの普及キャンペーンを行っています。詳しくは、ホームページの掲示板の「新しい救命救急戦略:医師が携帯する半自動除細動器(AED)」をご覧ください。

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▼【兵庫県外の話題】

・厚生労働省は、国際線の飛行機内での心臓突然死の救命救急にAED使用を客室乗務員に認められました。
 現在、世界の30社以上の航空会社が国際線にAEDを搭載し、取り扱い訓練を受けた客室乗務員が機内で発生した心臓突然死に対して除細動を行う緊急体制が既にとられています。日本では、10月1日から日本航空の国際線にようやく搭載されることになりましたが、心臓突然死の緊急時に医師が同乗していない場合に外国のように客室乗務員がAEDのボタンを押すことが出来るかが問題になっていました。厚生労働省は、12月19日付けで「国際的状況にも照らし合わせ、客室乗務員にも緊急時に除細動ボタンを押すことが医師法に反しないと」の判断を下しました。この判断は画期的であり、今後、日本においても集客施設(サッカースタジアム、野球場など)においても管理責任者がAEDの使用が可能になる道が開けたことになります。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人843件、団体57件の合計900件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
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  mail: mail@hyogohsc.or.jp
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