健康ニュース 2002年1月6日送付 発行部数 1060
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【新年のご挨拶】

・「お互いの命を守る社会づくり」を目指した、まず第一歩を。

 2001年9月11日のアメリカの同時多発テロと同じ時期に日本で発生した狂牛病の問題は、人間社会では起こりえないものはないことを改めて思い知らされました。
 「他人の命を守ることが、自分の命を守ることになる」とのメッセージを心肺蘇生法の普及啓発を通してアピールしてまいりました。健康づくりの啓発では、個人の生活習慣は次世代にも引き継がれるとし「自分の命は次世代のものでもある」という認識に立った活動を続けています。21世紀は「命の世紀」と言われますが、生命科学にもてあそばれないためにも、われわれ国民はしっかりとした命の倫理観と健康ビジョンをもたなければならない時期に来ています。
 新年から兵庫県立健康センターの旗幟鮮明(きしせんめい、show the flag)の御旗として、『長寿の道は、自立自尊』を掲げました。「健康とは自らを知る生きる喜び」を今年もアピールしたいと思っています。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−長寿の道は『自立自尊』
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

 現在の日本人の平均寿命は80.9歳で世界一であることはよく知られているが、平均寿命から生涯における病悩期間の合計を引いた「平均健康寿命」においても74.5歳で世界一である。このことは80.9歳から74.5歳を引いた平均6.4年間は寝たきりを初めとする身体的行動障害のある生活をおくっていることを意味している。単に命を生き長らえている生命寿命ではなく生活活動が可能な健康寿命の観点から高齢社会を見直す気運が出始めている。
 2000年には介護保険制度がスタートし、いわゆる?寝たきり老人??老人痴呆?を始めとする要介護者に対して公的保障がなされるようになったが、同時に社会の表舞台に登場するようになった。特に、?寝たきり老人?という日本特有の言葉は、あたかも高齢者を非生産者、社会的不要者とした影のイメージがある。その問題に対する社会の目は、今後増え続ける公的介護を支える財源をいかに確保するかであり、国民に対する寝たきり予防、生活習慣病予防のための具体的な国民啓発運動「健康日本21」もスタートした。
 本来、高齢社会における高齢者の果たす役割は、人生経験で得た智慧を次世代に伝える社会的活動にあり、次世代がその智慧を尊び、生かせる高齢社会こそが地球人類がめざす長寿社会なのである。今後の高齢社会の主役になる50歳台の団塊の世代は、長寿社会の実現にむけて、今から計画的な長寿人生の設計をすべきである。長寿者とは、人生を長く生きることを喜びと感じ、与えられた有限の命を最後まで生き抜く生命力を獲得した「今を生きている」人のことを言う。
 長寿であるためには、まず、好きな時に自由に行動できる身体的活動力を維持してなければならない。その健康づくりの基本は、正しい姿勢で歩くことである。背筋を伸ばし、膝を伸ばして、踵から地に着ける脊椎ストレッチウォーキング法は、高齢者に多く見られる腰椎障害、膝関節障害の予防になり、全身の筋肉を鍛える有酸素運動として最適である。元来、日本は「座る文化」と言われるのに対して、ドイツの高齢者のように「死ぬまで歩きつづける」という執念、「歩きながら考える」哲学の道など、ヨーロッパでは「歩く文化」が基本になっている。当然、寝たきり老人はいないことになる。「自立」とは、自らの力で地面に2本足で立つことと考える。
 長寿であるためのもうひとつは、この世に生まれた唯一の人としての「個の完成」である。人生の経験は、他人の存在を意識し、他人との関わりの中から「自分が何者か」を自問自答し、自分を磨き上げる好機である。この機会が多ければ多いほど他人ではない自分を知り、その経験が智慧として蓄積されるのである。長寿者は、物事に対して独自の判断ができ、自分を信じている「自尊」の人である。「自尊」とは、自主性の尊重を意味する。もはや既存の宗教、思想、学問にとらわれることなく、自分の耳目にて得たものを自分の智慧にて判断できることが「個の完成」である。そして、この瞬間に初めて人は「生かされている自分の命を感じる」のである。若者はこうした長寿者に人間の生き方の多様性を見出し、自己形成の糧にするのである。こうした長寿社会こそが、世代を超えた人間の個の多様性を伝達する社会形態である。
 老いの意味は、 身体活動、精神活動の衰えを感じる時である。老いることのない歳のとり方が「自立自尊」の道である。この世に生まれ、「個の完成」を目指して、最後の一片の命さえも使い切った人間が到達する境地は、ひょっとして「どんな人の人生もただの人生」と納得して、「命を感じて生きることのできた人生」を感謝して死んでいくのかもしれない。

 続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・インフルエンザの流行の時期になりました。

 インフルエンザは空っ風が吹く、寒い乾燥した頃に流行がはじまります。昨年のインフルエンザウイルスは、A/H1N1(ソ連)型とB型の混合感染で、今年も同じ傾向が続くと予想されています。昨年は予防ワクチンの不足が問題になっていましたが、今年は特に65歳以上の高齢者に対して予防ワクチン接種は順調です。インフルエンザは予防対策が重要で、高齢者のいる家族はお互いにインフルエンザウイルスを家庭内に持ち込まない注意が必要で、帰宅時には必ず手洗い、うがいが意外に有効です。高齢者の部屋には加湿器を設置し、室内の湿度を上げ、乾燥を防ぐようにしてください。インフルエンザウイルスの侵入路は、口腔および鼻腔粘膜細胞に侵入します。したがって、日頃から水分を多めにとり、粘膜面の粘液の分泌を促すことが細胞感染防御になります。タバコ、お酒は粘膜細胞を傷つけます。
 ウイルスに侵された粘膜細胞からはサイトカインが分泌され、全身症状として38℃の発熱、筋肉痛、関節痛が起こります。引き始めの第1日目が肝心で、最低3日は仕事を休み、自宅では、安静と水分補給に心がけ、家族ともできるだけ接しないようにすることが、他人にウイルスを移さない配慮となります。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・21世紀の健康ビジョンについてオンディマンド発信中です。

 第23回日本健康増進学会における、渥美和彦東京大学名誉教授「21世紀の医療のすがた:統合医療」、久常節子慶応義塾大学看護医療学部教授「生活習慣病と保健婦活動」、家森幸男京都大学名誉教授「生活習慣病と世界の食文化」、杉村隆国立がんセンター名誉総長「生活習慣病と健康長寿社会」、河村剛史学会長「長寿の道は、自立自尊」の講演につきまして、現在、映像とスライドをリンクさせインターネット上で公開いたしております。
 講演内容は勿論、その技術の応用は今後のブロードバンド時代におけるインターネットを活用した健康づくり情報発信の方法の一つとしても必ずお役に立つものと思います。是非一度アクセスしてみてください。

 アクセスポイント
 InternetExplorer5.0以上であれば、アドレスバーに直接「 健康づくり.net」(.netは英小文字)と入力!それ以外のブラウザであれば「http://www.health-jp.net/academic.html 」と入力してアクセス!
 または、健康センターのホームページ「 http://www.hyogohsc.or.jp/ 」のオンデマンドからアクセス!

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▼【兵庫県内の話題】

・兵庫県難病連主催第46回「医療・生活・教育」無料相談会開催のお知らせ

 兵庫県難病連では、兵庫県からの事業委託費をもとに、下記の内容で「医療・生活・教育」に関する無料相談会を開催します。難病でお悩みの皆さんのご来館をお待ちいたしております。
日時 平成14年1月20日(日)13時から16時
場所 洲本市総合福祉会館(洲本市山手2-2-26)
     TEL.(0799)26-0022
主催 兵庫県難病団体連絡協議会(神戸市中央区三宮町1-9-903-2)
     TEL.(078)322-1878
共催 兵庫県、洲本市

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▼【兵庫県外の話題】

・厚生労働省は「健康増進法」制定に向けて、1月通常国会へ法案提出を目指す。

 第三次国民健康づくり対策として2001年度から生活習慣病予防を目的とした「健康日本21」がスタートし、各自治体は2010年度までに具体的な目標を掲げて官民一体の健康づくり運動を行うことになっています。兵庫県では、「健康ひょうご21」を県民運動として現在展開中です。今回の法案は、地方計画づくりや具体的目標の評価を新法で規定し、実効性を高める狙いがある。生活習慣病予防による医療費抑制を図る目的を明確にしたものといえます。この法案にて最も効果が期待できるのは、公共の場での分煙の徹底で、今後、公共施設内での全館禁煙の大きな一歩を踏み出すことになります。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1,003件、団体57件の合計1,060件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
  FAX: (078)441-2149
  URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
  mail: mail@hyogohsc.or.jp

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