健康ニュース 2002年3月6日送付 発行部数 1106件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・医療制度改革関連法案を国会に提出

 政府は3月1日、医療制度改革関連法案を臨時閣議で決定し、国会に提出しました。成立すれば、サラリーマン家庭の医療費負担は来年4月から3割。成立すれば、サラリーマン家庭の医療費負担は来年4月から3割(将来も3割が上限)に引き上げられます。70歳以上の高齢者は1割の定率負担となり、一定以上の収入がある人(夫婦2人世帯で年収約630万円以上)は2割負担となります。3歳未満の乳幼児は3割から2割負担に引き下げられます。
 昭和36年から始まった国民皆保険制度を今後も維持するための財政的な見直しですが、この改正の前段階に過去にはなかった今年の4月からの診療報酬の引き下げが実施されることになっております。国民の病気への心理的不安が、今後、自己防衛としての生活習慣病予防のための生活の見直しにつながらなければ、財政問題の解決の先送りにすぎないと思います。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−「人間の自尊心」を教えた心肺蘇生法
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

  私の心肺蘇生法の歴史を振り返ってみると、1988年8月にカルフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医療センターから兵庫県立姫路循環器病センター救命救急センターに勤務した直後から姫路市を中心に心肺蘇生法の普及啓発を開始した。1990年4月からは兵庫県県民運動「命を大切に、あなたも心肺蘇生法を」に発展し、5年間で108万人の実技講習を達成することができた。私個人が関った心肺蘇生法の講演および実技講習会は2000年3月に1000回、受講者総数は5万人に達した。受講者には身体障害者も含まれている。
  過去の講習会で経験した受講生の身体障害部位は、全盲、聾唖、下半身麻痺、四肢麻痺、両上肢形成不全、1側上肢形成不全、手指欠損、および関節リュウマチによる関節障害などである。
  心肺蘇生法は、目の前で人が倒れた時、「大丈夫ですか」と声をかけ、意識がなければ、すぐさま大声で助けを呼ぶ、人間愛に基づいた当然の行為である。他人の命が危機にさらされている時に人として何ができるかが問われており、身体障害者も例外ではないと考えている。講習会では、個々の身体障害に対応した独自の心肺蘇生法のやり方を伝授している。
  心肺蘇生法を生徒に教えた姫路のある高等学校の経験である。心肺蘇生法の動機づけの話しをしている時に、後方に車椅子に座っている生徒がいることに気付いた。彼を意識して、思いきって「目の前で人が倒れた時には、身体障害があるから助けることが出来なかったと言ってはいけない」と彼に話しをぶつけてみた。話しが終わり、心肺蘇生法のやり方を説明するために一体の人形の周り生徒を集めたが、この時、意外にも彼は自分で車椅子を動かすのではなく友達が押して来た。私の目の前に来て、今度は逆に挑戦的に「私でも心肺蘇生法が出来ますか」と問いかけてきた。
  よく見ると、車椅子に下肢、腰、上肢をバンドで固定しており、なんと彼は脊椎損傷にて上肢下肢麻痺で、頭部だけが動かせる状態であった。私は過去にも下半身麻痺の障害者には車椅子から降りて、上半身の支えのみで行う工夫した心肺蘇生法を教えていた経験もあり、彼もてっきり下半身麻痺の障害者と思っており、まさか、上下肢障害がある四肢麻痺障害者とは思ってもみなかった。
  一瞬、「しまった」と頭をよぎったが、次の瞬間、「君にも心肺蘇生法が出来る」、「君には目と口がある。目の前で友達が倒れたら、大声で助けを呼びなさい」、「しかし、それだけではダメだ、次に教える心肺蘇生法のやり方をしっかりと頭に入れ、助けに来てくれた友達に正しい心肺蘇生法が出来るように、口頭でやり方を指示しなさい。これが君の心肺蘇生法だ」と言って、一体の訓練人形の頭側に車椅子を移動させ、私のアシスタントの役割を与えた。
  後日、校長先生からのお礼の手紙が届いた。この手紙の中に、私が彼に対応した接し方が彼にこれから生きていく力を与えたとの感謝の内容が書かれていた。彼は脊椎損傷を受傷する以前から、もともと自立心の強い人間であり、脊椎損傷の受傷後においても車椅子に身体を縛り付けてでも元の仲間と勉強したいとの前向きの強固な意志を持っており、学校も彼の希望をかなえるようにしていた。しかし、自立心が強い人間であるが故に、これからの人生において周囲の人間の助けなしでは生きていけない自分の運命に悩み、教師もこの解決に答えることが出来なかった。
  私が彼に行った心肺蘇生法の指導は、「もし目の前で人が倒れたなら、自分でも人の命を救うことが出来るのだ」という思いが、この世でのおのれの存在の意義として捉え、これがようやく見つけた、彼が生きていく「おのれの自尊心」となった。心の悩みも晴れ、今は生き生きとして学校生活を楽しんでいるとのことであった。

 続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・トランス脂肪酸の摂取は不整脈、心臓突然死のリスクを高める

 トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸に水素添加によって固めたマーガリン、植物油を使ったフライによる熱により生じます。以前から特にトランス型リノール酸(18:2)の人体に及ぼす影響が問題になっています。最近の循環器専門誌の「Circulation」に、トランス型リノール酸の摂取により摂取していないコントロール群に比較して3倍の心臓突然死が発生した疫学調査を発表しました。自然界には存在しない人工物であるトランス脂肪酸が細胞膜に取り込まれると、細胞膜に存在するイオン・チャンネルの機能障害を来たし、不整脈による心臓突然死を招来すると言われています。自然のバターを控えめに使えばマーガリン使用より安全といえます。ファーストフード店でのピザ、フライドポテトなどはトランス脂肪酸の摂取が多くなるので注意が必要です。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・毎週水曜日サンTV午後8時から9時「立原啓裕のからだにいい時間」に河村剛史所長出演中

 平成14年1月23日:肥満のメカニズム(ゲスト 渡嘉敷勝男)
 平成14年1月30日:風邪とインフルエンザ(ゲスト 長原成樹)
 平成14年2月06日:胸の痛み(ゲスト 横山たかし)
 平成14年2月16日:動悸・息切れ(ゲスト 横山ひろし)
 平成14年2月20日:腰痛は治る(ゲスト ダンプ松本)
 平成14年2月27日:立ちくらみ(ゲスト 穴井夕子)
 平成14年3月06日:アレルギーは治る(ゲスト 泉 アキ)
 平成14年3月13日:糖尿病の予防(ゲスト 三島ゆり子)
 平成14年3月20日:体内リズムと心臓病(ゲスト 坂田利夫)
 平成14年3月27日:脈が飛ぶ(ゲスト 秋川リサ)

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▼【兵庫県内の話題】

・2002FIFAワールドカップ日韓開催記念神戸アスリートタウン構想推進シンポジウム「第1回スポーツNPOサミットin Kobe」の開催

 平成14年3月10日(日)午前10時から神戸ファッションマート イオホールにて開催されます。基調講演会には『新しいスポーツ文化"ささえるスポーツ"の可能性』(神戸大学発達科学部教授 山口泰雄氏)、記念講演会には『スポーツで、もっと、幸せな国へ。』Jリーグ百年構想(Jリーグチェアマン 川淵三郎氏)が予定されています。なお、セッションでは河村剛史兵庫県立健康センター所長が『ワ−ルドカップ時の医師による救急医療体制のご提案』について講演いたします。

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▼【兵庫県外の話題】

・英国たばこ会社会長が禁煙の呼び掛け

 全世界で8000億本のたばこを販売している世界第2のたばこ会社英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)のマーチン・ブロートン会長が、英タイムズ紙のインタビューに答えて、「たばこは健康によくない。私も控えている」、「子どもにたばこを吸うなと忠告した」と告白しました。父親の忠告を聞き入れた娘と息子は吸わず、会長自身も「たばこは健康を害するため夕食後に時々喫煙する以外は控えている」と述べています。
 欧米では、たばこの広告は禁止されております。日本では、「タバコの吸いすぎは健康を害します」と下段に印刷された広告ポスターの車内に掲示されているのが目立ちます。ポスターのデザインは、禁煙キャンペーンではなく、若者に喫煙のかっこよさをアピールする内容になっています。禁煙キャンペーンこそは、生活習慣病予防の目に見える予防対策です。2003年4月から健康保険本人の3割負担となりますが、自己負担増の心理的な影響にて健康への自己管理意識が、今後ますます高まってくるものと思われます。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1049件、団体57件の合計1106件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
  FAX: (078)441-2149
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