健康ニュース 2002年4月2日送付 発行部数 1120件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ 外国の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・兵庫県立健康センターは設立20周年を迎えます。

 1978年(昭和53年)の旧厚生省の第一次国民健康づくり政策に基づき各都道府県に健康増進センターの設置が推進されもので、1982年(昭和57年)6月1日に設立された兵庫県立健康センターはお陰様にて今年で20周年を迎えます。
 兵庫県では,1982年を健康元年と称し,健康科学シンポジウムを開催しました.この時に故須田 勇元神戸大学学長から私案として提案された健康憲章をもとに,1985年(昭和60年)9月1日に兵庫県民健康憲章を制定しました.兵庫県立健康センターは県民健康憲章を施設理念に掲げ、普及啓発を行ってまいりました。現在は、健康増進から生活習慣病予防に方向転換し、健康づくりを通して21世紀に向けた健康ビジョン「健康は、みずからを知る 生きる喜び」を普及啓発しております。県民一人ひとりが健康づくり実践者として家族、職場、地域に仲間づくりをする草の根運動が真の県民運動と考えています。

【兵庫県民健康憲章】
 健康は、ひとりひとりが自分に応じて伸ばすもの。それは生きがいを生みだす《いずみ》、明るい暮らしと社会を築く《いしずえ》。私たちは、恵まれた自然、豊かな文化、活力ある兵庫に生き、心とからだの健康づくり運動を目ざし、《きょう》そして《あす》へのために、この憲章を定める。
1.健康は自分が進んで守り、高めるという自覚を持とう。
2.自分の健康を正しく知り、次に続く世代のためにもよい生活習慣を身につけよう。
3.個人から家庭、学校、職場、地域社会へ健康づくりの輪を広げよう。
4.互いに協力し、快適で住みよい環境をつくり出そう。
5.心身ともに健やかに、生まれ、育ち、暮らし、美しく老いることができる《健康福祉社会》を実現させよう。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」 −半自動除細動器(AED)の一般市民普及は世界の趨勢
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

 2001年の秋から日本航空の国際線に半自動除細動器(AED)が搭載され、機内で心臓突然死が発生した場合、機内に同乗している医師により除細動を行える体制を整えた。さらに、医師が同乗していない場合には、使用訓練を受けた客室乗務員が緊急対応として除細動ボタンを押すことができることになっている。この背景には、30社以上の外国航空会社のAEDが搭載され、すでに機内での心臓突然死の救命例が報告されてり、AED搭載は機内での救急体制の基本になっている。日本航空も日本の医療事情ではなく、世界の救急の常識に従わざるを得なかったものと思われる。
 心臓突然死の原因は、心室細動の発症により心臓の筋肉が痙攣して心臓からの血液の拍出がなくなる心停止によるもので、唯一の治療法はできるだけ早期に除細動を行うことである。心停止の状態が4分以上続けば脳細胞が致命的な障害をうけ、同時に心臓では除細動が可能な心室細動の状態から除細動の効果がない心電図変化が起こっている。心臓突然死に対して、一般的には4分以内に心肺蘇生法を行い、8分以内に除細動が施行されれば43%の救命が可能とされている。専門的な立場から言えば、心室細動から救命には、4分以内に除細動を行うことができれば、心肺蘇生法を行わなくても救命は可能である、心肺蘇生法の実施により、脳循環を維持し脳細胞障害を最小限度に押さえ、同時に冠動脈循環を維持することにより除細動可能な心室細動を維持する時間的余裕を8分にまで延長が可能となる。
 AEDによる早期除細動の有効性については、米国の32ヶ所のカジノにおける心臓突然死に対する警備員のAEDによる救命報告がある。1997年3月から32ヶ月間で142例の心臓突然死が発生し、この内、警備員の目の前で倒れた目撃者心臓突然死90例(平均年齢65歳、80%男性)は全例、原因が心室細動であり、AEDのパッチ電極装着まで2.9分、初回除細動まで4.4分であり、最終的に53例(59%)の人が病院を退院することができた。同時に救急車の出動を要請しているが、パラメディック(日本の救急救命士)が到着したのは9.8分かかっており、警備員がAEDを使用しなければ救命率は20%前後まで減少しており、AEDの有効性を証明する報告である。
 アメリカ心臓協会(AHA)が2000年の心肺蘇生法の世界統一ガイドラインを発表したが、この中で一次救命処置(BLS)にAEDの積極的な導入を提唱しており、心肺蘇生法を習得した一般市民が3時間のAEDの取り扱い講習を受ければ使用できるとしている。国際線の機内搭載のみならず、スタジアム、劇場、空港、駅などの集客施設にAEDの設置を推奨している。シカゴのオヘア空港では41台のAEDを消火栓のように設置しており、空港内で心臓突然死が発生した場合には、1分半以内のAEDを現場に持って来ることが出来るAEDの配置体制が整っている。
 2001年のソートレークオリンピックでは、マスコミ報道では主にテロ対策警備が取上げられていたが、会場内の各所に214台のAEDが配置されおり、世界各国から集まった選手、観客の命を守る救命救急体制が整えられていたことはあまり知られていない。今年の5月に行われるワールドカップでは、日本の10ヶ所で行われるが、マスコミではヨーロッパでの開催で問題となるフリーガン対策が大きく取上げられており、各会場でも警備体制の強化についての報道がなされている。一会場には4,5万人の観客が詰め掛けており、観客の命を守る救急体制については世界レベルに比べても非常に遅れており、最近、ようやく数台のAEDの購入された程度で、日本人の「命の危機管理意識」の低さを世界に示すことになっている。

 続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・喫煙による冠動脈血管への影響は冠拡張剤ニトログリセリンの逆である冠動脈収縮剤です。

 米国の循環器専門誌「Circulation」に日本人男性喫煙者20人を対象とした研究報告が掲載されました。たばこ一本の喫煙により血液中のNO(一酸化窒素)とビタミンC濃度が減少しました。狭心症の時の特効薬がニトログリセリンですが、この薬は血液中でNOに変化し、冠動脈血管を拡張します。喫煙は血管内皮細胞機能を傷害し、NOが産生されなくなり、冠動脈血管は収縮します。同時に、喫煙により大量の活性酸素が体内に吸収され、抗酸化作用のあるビタミンC(アスコルビン酸)が消費され、血中濃度が低下するためです。喫煙習慣は、交感神経を緊張させ、血液中の遊離脂肪酸濃度を上げ、冠動脈血管を直接的に収縮させるなど、その生体作用は心臓突然死、心筋梗塞、狭心症、不整脈の元凶です。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・職員移動のお知らせ

 転出
  寺岡幸之助(運動指導課長)→企画管理部国体準備局競技課長補佐(競技・用具担当)
  柿本博司(運動指導専門員)→県立嬉野台生涯教育センター指導主事
 新任
  池田知恵(管理課)

・兵庫県立健康センター20周年記念事業「健康は、みずからを知る 生きる喜び」

 平成14年5月19日(日)午前9:15から午後17:00まで
 【記念行事】
 ・脊椎ストレッチウォーキング in 住吉川
 ・100Kcalカウントダイエット講座
 ・プールでの水中運動、水難救助訓練
 ・フィットネス・健康運動プログラム

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▼【兵庫県内の話題】

 「人と防災未来センター」開設記念二元フォーラムが4月22日(月)、23日(火)
に開催

 「人と人のつながりがいのちを守る」:市民救命士が社会に貢献できること
  申し込み:神戸市消防局救急救助課(TEL078-322-5749)
  日時:4月22日(月)PM13:30〜16:40
  場所:神戸市産業振興センター3階センターホール(ハーバーランド内)
  基調講演:「あなたは愛する人を救えますか」
        河村剛史(兵庫県立健康センター 所長)
  パネルディスカッション「人と人のつながりがいのちを守る」
 「これからの災害に備えて:人と防災未来センターへの期待」
  申し込み:兵庫県メモリアルセンター準備室(TEL078-341-7711)
  日時:4月23日(火)PM13:30〜17:30
  場所:兵庫県立美術館「芸術の館」ミュージアムホール

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▼【兵庫県外の話題】

・2002年度内に救急救命士の業務拡大へ

 医師にしか認められていない救急救命士の「気管内挿管」、「電気的除細動」の処置について、坂口力厚生労働相は200年度内に体制を整備する意向を明らかにしました。この中で、心臓突然死の原因である心室細動に対する唯一の有効な治療法である「早期除細動」は、昨年の12月に国際線の機内での発生に対して客室乗務員が医師の対応がない場合にはショックボタンを押すことが認めらていることから、専門職である救急救命士には医師の指示なしにショックボタンを押すことが認められるのは早いと思われます。この背景には、除細動が可能な心室細動のみを自動認識する半自動除細動器(AED)の認識精度の信頼性が世界的に認められているためです。

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▼【外国の話題】

・たばこ会社に巨額支払い評決

 肺がんで親族が死んだのは低タールたばこは安全と誤った印象与えたため、と遺族が米大手たばこ会社を訴えた訴訟で陪審団が会社に1億5千万ドル(200億円)の支払いを命じる評決を下しました。要求額は3億5百万ドル。うち49%が本人の自己責任、51%が会社責任としました。

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▼【お願い】
 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1063件、団体57件の合計1120件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
  FAX: (078)441-2149
  URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
  mail: mail@hyogohsc.or.jp

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