健康ニュース 2002年9月5日送付 発行部数 1058件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・9月17日の小泉首相の北朝鮮訪問への期待
 心肺蘇生法の普及啓発は、「お互いの命を守る社会づくり」の意識を高める最も有効な手段です。1人の命を守るために全員が心肺蘇生法を習得し、他人の命を守ることが自分の命も守られていると意識できることが、安全・安心社会づくりの基本と考えます。
 日本国民の多くが、小泉首相の北朝鮮訪問の第一の成果に拉致問題の解決を期待しております。強制的に連れ去られた日本人の命(人権)を守るために日本国首相が毅然とした姿を見せることこそが、日本国民が国を愛し、日本国民であることを誇りに感じる出発点になると思います。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−マザー・テレサの心の叫び
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

 目の前で突然、人が倒れた時、その人の命を救うには、その場にいたすべての人が一致団結して救命に参加することが求められる。心肺蘇生法の講習会は、訓練人形一体に付き参加者10人を割り当てて全員が参加できるようにしている。実技講習の前の講話は、参加者に心肺蘇生法の習得が人間にとっていかに大切かを感じてもらい、参加者全員が真剣に実技に取り組む心の動機付けとして最も力を入れている所である。
 定時制有馬高校から心肺蘇生法の講習の依頼を受けた。校長先生から生徒の中にグループのボスがいるので私の話を聞かず迷惑をかけるかもしれないとの事前の断りがあった。昼間の仕事を終えた30人程の高校生が研修室に集まっていた。予想通り私の話には興味を示す様子はなく、最前列の生徒(問題の生徒とすぐにわかった)は、私の目の前で心肺蘇生法の手順を書いたパンフレットで紙飛行機を折っており、つまらない話はやめろと言わんばかりであった。話のネタに行き詰った私はこのまま引き下がることはできないと最後の手段に出た。「君たち、真のボスとはどんな人間と思うか」、「真のボスとは、部下が倒れた時、真っ先に駆けつける人間だ」と叫んだ時、思わぬ光景が目に映った。なんとパンフレットで折った紙飛行機を元のパンフレットに戻しているではないか。私の動機付けが成功した瞬間である。実技講習には通称ボスも当然ながら参加した。残念ながら、彼がチューインガムを噛んでいるので、人工呼吸はチューインガムを噛んではできないから口から出しなさいと注意した所、それならやらないと5人の仲間を引き連れて研修室から出て行った。もう一息であった。
 もう一つは定時制姫路北高校の話である。60人程の生徒が研修室に集まって、ガヤガヤ騒いでいた。校長先生は私語を制止することもなく、私の紹介をし、すぐにマイクを私に渡した。ガヤガヤ騒いでいる中での講話は実にやりにくいものである。周りの先生の誰もがあきらめた様子で、「やかましい、静かにしろ」と言う人もいなかった。しかし、生徒をよく観察していると話の内容によっては耳を傾ける生徒もいることに気付き、どんな話が彼ら全員を引き付けるのか話術の挑戦となった。最後の切り札として残していた「真のボスとはどんな人間か」を切り出したが期待した反応はなかった。仕方がないので、彼らには通じないだろうと思って話す予定になかったマザー・テレサの「死を待つ館」の話をした所、意外にも私語が消え耳を傾けている雰囲気が伝わってきた。誰も看取られず死んで行くこの世で最も不幸な人に、「生きていてよかったね」と耳元で語りかけたマザーの言葉を伝えた時、「この世に生まれた命に無駄な命は一つもない」とのマザーの心の叫びが彼らに伝わったような気がした。伏せ目がちであった彼らの目が輝いた瞬間であった。
 心肺蘇生法の講習も終わり、生徒たちは思い思いにガヤガヤ喋っている最中に、教頭先生がマイクを持ち、「みんな、聞いてくれるか」と話しかけた瞬間、生徒が一斉に視線を教頭先生に向けた。教頭先生が、小さい時に可愛がってもらった近所の小父さんが、目の前で自動車にはねられ、声をかけることしかできずに腕の中で死んでいった過去の心に秘めた経験を話し始めた。何もできなかったことを今まで後悔していたが、今日の私の話で心が救われたとも言われた。
 数週間後、生徒の講演感想文とともに教頭先生の手紙が届いた。感想文の中に、「自分はこの世ではどうでもよい人間と思っていたが、自分でも世の中で役に立つことがある。それは倒れた人に声をかけることである」と書かれた文書があった。彼は、この世に生まれ、世に役に立つことが、自己の存在の意義であり、生きる力であることを悟ったのかもしれない。手紙の最後に、生徒に呼びかけた時に彼らが一斉に向けた視線と過去の話をおとなしく聞いてくれた感激は忘れられないと感謝の言葉が添えられていた。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・魚を食べることは心臓突然死の予防につながる。
 魚油は3価不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれております。日常の食生活で多く魚を食べる習慣のある人には、血液がサラサラにして心筋梗塞の発生を抑えることは良く知られていますが、最近、不整脈、心臓突然死の発生を抑えることもイタリアで行われた大規模試験(GISSI試験、1999年))で証明されました。生体の細胞膜はリン脂質(ホスホリピッド)の2重膜構造で構成されており、どうのような脂肪酸が細胞膜に組み込まれるかによって細胞膜の機能が大きく異なります。心筋細胞膜や細胞内にあるミトコンドリアと呼ばれるエネルギー産生器官の細胞膜の構成脂肪酸としてDHAが組み入れられることにより、心筋細胞の働きが効率よくなり、その結果、心筋の酸素消費量が減少し、心臓の機能が向上すると同時に不整脈の発生を抑えことにより心臓突然死の予防効果があることが明らかにされました。
 日本の伝統食は低脂肪食ですが、魚を多く食べることによる3価不飽和脂肪酸の摂取が心筋梗塞、心臓突然死の発生を抑えます。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・第3回兵庫県医師会健康・スポーツシンポジウム(2002年8月22日)の講演内容がインターネットでご覧いただけます。ただし、Windows Media Playerが必要です。
講演1「スポーツ時の心臓突然死予防対策」
  兵庫県医師会健康スポーツ医学委員会委員長 河村剛史
  http://www.hyogohsc.or.jp/2002sympo/kawamura.htm
講演2「糖尿病予備群の病態と栄養管理」
  徳島大学医学部特殊栄養学科教授 中屋豊
  http://www.hyogohsc.or.jp/2002sympo/nakaya.htm
討論
  兵庫県医師会健康スポーツ医学委員会委員長 河村剛史
  徳島大学医学部特殊栄養学科教授 中屋豊
 座長
  兵庫県医師会健康スポーツ医学委員会副委員長 中村亮爾
  http://www.hyogohsc.or.jp/2002sympo/discussion.htm

・平成14年度ひょうご健康づくり強調月間特別事業「心肺蘇生法普及500人講習会」開催のお知らせ
 県民一人一人が命の尊さを理解し、お互いの命を守る社会づくりを目指して、自らが「命の実践者」になるための啓発運動です。「あなたは愛する人を救えますか」の提唱者である河村剛史所長が講演と実技指導を行います。皆様の参加をお待ちいたしております。
日 時:平成14年9月8日(日)13:00〜15:00
場 所:兵庫県立健康センター 3階体育ホール
参加料:無料
申込み:先着順(500名)
申し込み先:兵庫県立健康センター
    TEL 078-441-2234、FAX 078-441-2149
    E-メール:mail@hyogohsc.or.jp

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▼【兵庫県内の話題】

・脊椎ストレッチウォーキング・イベントのお知らせ
 脊椎ストレッチウォーキング「毎日歩こう、背筋を伸ばして、今のあなたにもう1000歩」を兵庫県県民運動として展開しています。健康講話、医師による健康相談、専門運動実践指導士による脊椎ストレッチウォーキングの実技指導を行います。

1)「脊椎ストレッチウォーキングin垂水」
 主催:健康スポーツ関連施設連絡協議会、兵庫県医師会,神戸市医師会、垂水区医師会
 日時:平成14年9月19日午後14:00〜16:30
 会場:KTVフィットネスクラブ フレスコ(JR垂水駅東口北側)
    海岸通、アジュール舞子周辺遊歩道(5km・3km)

2)「脊椎ストレッチウォーキングin姫路城」
 主催:兵庫県医師会、姫路市医師会
 日時:平成14年10月5日午後14:00〜16:30
 会場:日本城郭研究センター(姫路市本町68-258)
    姫路城遊歩道(5km・3km)
 申し込み:姫路市医師会TEL:0792-94-3300
      締め切り9月13日、先着順200名

・2002ひょうご健康づくり県民大会の開催のお知らせ
 主催:兵庫県,揖保川町、(財)兵庫県健康財団
 日時:平成14年9月20日 PM13:00〜15:50
 場所:揖保川町文化福祉総合会館アクワホール
    揖保郡揖保川町正條354-1 TEL:0791-72-4688
 記念講演「長寿食のコツ 健康を食べる食事学」
    程 一彦(料理研究家)
 第14回兵庫のまつりーふれあいの祭典 健康福祉イベントとの合同開催

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▼【兵庫県外の話題】

・デフレは日本人の食習慣を更に悪化させる。
 某ファーストフード社がハンバーガを59円に大幅値下げした所、なんと一週間で延べ3100万人がハンバーガーを食べ、過去最高の売り上げを記録したニュースがありました。生活習慣病予防には全エネルギーに占める脂肪摂取の割合を現在の28%から25%に減らすことが目標ですが、デフレ経済の中、ファーストフード店の値下げ競争は、半数以上の日本国民に何のためらいもなく安い高脂肪食を食べさせる結果となり、生活習慣病予防に悪影響を及ぼしていることになります。
 こうした状況の中でこそ日本では自給率100%の米(できれば玄米は総合食品)を食べるキャンペーンが必要ではないでしょうか。生活習慣病予防の食事は、「元気ですこやかだ」げん(玄米)き(キノコ)で(芋)、す(酢の物)こ(昆布)や(野菜)か(カルシウム)だ(大豆)が基本になります。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1004件、団体54件の合計1058件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
  FAX: (078)441-2149
  URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
  mail: mail@hyogohsc.or.jp

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