健康ニュース 2002年12月14日送付 発行部数 1092件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・危機とは、めったに起こらないが必ず起こるもの
  必ず起こるが、めったにないから必要なものは、消火器、エアーバック、半自動除細動器(AED)です。ブッシュ大統領は、今年の6月12日に米国国内の公的施設への配布や救急隊への配備、会社や社会におけるAEDの設置促進のために2500万ドルを2003年どの予算に組み入れました。
  11月21日の高円宮殿下のスポーツ時の心室細動による死亡が報じられた時、カナダ大使館にはなぜAEDがなかったのかと最初に思いました。11月23日には福知山と名古屋のマラソン中に3人の人が心臓突然死で死亡しましたが、翌11月24日の尼崎市シティーマラソンでは、65歳の男性がゴール直後に倒れ、心停止状態でしたが、救命することが出来ました。
  兵庫県では県医師会開業医が中心となってAEDの購入を進めており、現在、全国の購入台数が200台程度の内、半分以上が県医師会開業医が購入しております。尼崎市シティーマラソンの安全管理体制を担当した尼崎市医師会の14名の医師の内、10名が10台のAEDを携帯して等間隔にマラソンコースに立ち、緊急に備えておりました。ゴール直後の心停止に対してAEDを装着する前に、幸いにも前胸部強打法により正常の心拍に戻り、事なきを得ました。病院入院後の冠動脈造影では冠動脈狭窄、心筋梗塞の所見はなく、心臓突然死のもうひとつの原因である心室粗動(心室細動の一歩手前)が起こっていたものと考えられました。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−半自動除細動器(AED)は生きる希望
兵庫県立健康センター所長
河村 剛史

  1986年1月22日のダイエー対日立のバレーボールの試合中にフロー・ハイマン選手が突然倒れ、試合が中断することなく、試合会場から担架で運び出されるTVニュースが米国で放送された時、ニュースを見ていた米国人から、「なせ、日本人は心肺蘇生法をしないのか」との批判を受けた。目の前で人が突然、倒れた時、すぐさま意識の確認を行い、意識がなければ、救急車を呼ぶ「命の危機管理教育」がなされてないことを感じ、1987年の帰国後、心肺蘇生法の普及を開始し、1990年からは心肺蘇生法県民運動に発展し、5年間で540万人の兵庫県民の内の約2割の108万人の講習実績を達成した。日本の心肺蘇生法普及は、ハイマン事故からスタートしたといても過言ではない。
  2002年11月21日のカナダ大使館で起こった高円宮殿下(47歳)のスカッシュ練習中の心臓突然死、11月23日には福知山マラソン中に58歳と59歳の男性、同日の名古屋シティマラソン中に58歳の男性が心臓突然死で死亡する事故が重なった。いずれの事例でもその場に居合わせた大使館員、マラソンでは沿道5Kmごとに配置されていた救命士、参加者の医師、看護師による心肺蘇生法がなされ、一見、救命リレー(Chain of Survival)の連携がスムーズに行っているかに思えたが、いずれの事例も半自動除細動器(AED)にて救命できたきた可能性がある。この事故から今後、日本におけるAEDの認識と普及が始まる予感がする。
  米国心臓協会が2000年8月に発表した心肺蘇生法国際ガイドライン2000では、一般市民は意識の確認を行い、意識がなければすぐさま救急車を呼び、救急車が到着するまで心臓マッサージだけを行う簡易的な心肺蘇生法に変更された。この背景には、欧米では口対口人工呼吸に対して感染症を恐れる一般市民に抵抗感が増えていることが反映している。幸いにも、小型軽量の携帯型の半自動除細動器(AED)の開発が進んだことから、AEDを用いた5分以内の早期除細動を行うことが可能になった。
  国際ガイドライン2000では、心臓突然死の救命のためには地域社会全体が救命に参加することを目指し、一般市民が緊急時にAEDを使用するパブリック・アクセス除細動(PAD)を勧告している。そのためには、空港、駅、スタジアム、デパートなどの人が多く集まる施設に消火器と同様に設置され、訓練を受けた一般市民が早期除細動を行うことができる救命救急体制が求められている。
  AEDは除細動が可能な電位波高の大きい(粗い)心室細動のみを波形認識し、自動的に電気エネルギーの充電をし、使用者はパッチ電極を患者の右前胸部と左側胸部に貼り付け、後は除細動ボタンを押すだけの極めて簡単な装置である。しかも、使用上の手順と注意は音声で指示をする。間違って除細動を行うことのない信頼できる装置である。
  心臓突然死の原因は心室細動で、心臓の筋肉が無秩序に興奮して心筋がケイレンし、心臓からの血液の拍出がなくなる心停止状態になる。すばやい電気ショック(除細動)を行うことが唯一の最も有効な救命手段である。心停止状態から除細動施行までの時間が1分経過するごとに約10%、生存率が低下すると言われている。
  一般市民が人工呼吸を行わずに心臓マッサージだけを行っても、8分以内に除細動を行えば循環の回復が可能である。この間、脳と心臓への血流は最小限に維持されており、除細動可能な粗い心室細動が維持できるからである。むしろ、慣れない2回の口対口人工呼吸に手間取り、その間、心臓マッサージを中断する方が冠動脈への血液の灌流を減少させ、そのために心室細動波形の波高が減少し、除細動には不利になる。
  2002年4月から待望の救急救命士による医師の指示なし除細動が許可され、これにより心停止後8分以内の早期除細動は可能となる。今後、一般市民は心停止患者に対してすぐざま救急車を呼び、救命士が到着するまで心臓マッサージのみを続けるが救命のカギを握ることになる。

【追記】
  2004年7月1日に厚生労働省は一般市民にAEDの使用を許可した。AED(Automated External Defibrillator)は、自動体外式式除細動器と呼ぶことになった。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・男性45歳、女性55歳以上の動脈硬化年齢における運動時高血圧について
 動脈硬化は加齢とともに動脈壁の弾力性が減少し、徐々に硬くなっていく状態を言います。安静時の血圧が年齢とともに徐々に高くなるのはこのためです。特に、男性45歳、女性55歳の年齢そのものが、心筋梗塞発症の危険因子と見なされます。女性が男性よりの10年遅れる理由は、閉経の年齢まで女性ホルモンの分泌が強力な抗動脈硬化作用があるためです。安静時の血圧が正常範囲内であっても、運動すれば心拍数の増加とともに血圧の増加が見られます。激しい運動では血圧が200mmHgを超えるのが普通です。運動時高血圧は本人の自覚症状としては、通常、動悸、息切れと感じますが、今回の一連のマラソン死亡事故のように苦しみが喜びと感じる競技者には長時間、危険な状態にさらされることになます。場合によっては冠動脈内の不安定プラーク(狭窄部のこぶ)に亀裂が生じ、冠動脈内血栓が発生し、急性心筋梗塞が起こります。
 動脈硬化年齢以後の人が、運動不足の解消のため運動しようと決意した時、今後も競技スポーツを続けたいと思っている場合には、一度、運動負荷試験を受けることをお勧めします。どの程度の運動強度が血圧200mmHgを超えるのかは個人差かあります。脂肪を燃やす有酸素運動が安全なのは、中等度以下の運動強度であるためです。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・兵庫県立健康センター20周年記念事業:湯浅景元教授講演会「一流アスリートに学ぶ効果的な練習の仕方」
 超一流スポーツ選手は、どうして強いのだろうか? 湯浅中京大学体育学部教授は、動作解析の第一人者であり、専門分野は「コーチング科学」で、ビデオカメラや筋電図・力量計・コンピュータなどを駆使して一流アスリート(野茂、イチロー、マイケル・ジョーダン、モーリス・グリーン、タイガーウッズなど)の動きを解析しています。一流アスリートの完成された動きの裏側には、練習方法の重要なポイントが隠されています。この機会に是非、あなたのスポーツ活動にお役立てください。

 日時:平成15年1月11日(土)午後14:00〜16:00
 場所:コープこうべ生活文化センター 大ホール(健康センター隣)
 参加費:一般4,000円、学生3,000円
 申し込み方法:FAX 078-441-2149、メール tanabe@hyogohsc.or.jp
問い合わせ:電話 078-441-2234

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▼【兵庫県内の話題】

・「スポーツクラブ21ひょうご」事業の進捗状況
 2000年(平成12年)度から法人県民税超過課税を財源として、2005年(平成17年)度までに全県下の小学校区(837校区)に地域住民が主体となった地域に根ざしたスポーツクラブの設置を支援する事業です。県は運営が軌道に乗るまでの5年間、クラブハウスの整備費を含め、1クラブ当たり1300万円の補助金を交付しています。この事業は、旧文部省の「地域総合型スポーツクラブ」構想を受けたもので、2002年11月末現在で329団体のクラブが設置されており、本年度中には499の地域スポーツクラブが設置される予定になっています。
 この事業は、子供から高齢者までの生涯スポーツを通して健康づくりを目指したもので、従来の学校スポーツ、企業スポーツとは異なった、いつでも、どこでも健康スポーツを楽しむ地域環境をつくり、あわせて、世代を超えた地域のふれあいを通して青少年の心の地域教育の向上を狙っています。
 最近、スポーツ時の事故が問題になっていますが、地域指導者の安全意識が不足しており、兵庫県医師会の健康スポーツ医が健康スポーツを通した地域の生涯にわたる継続した生活習慣病予防の絶好の実践場として積極的なかかわりが必要と訴えています。

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▼【兵庫県外の話題】

・2003年4月より待望の救急救命士による「医師の指示なし除細動」が認められることになりました。
 厚生労働省と総務省消防庁との合同作業班よる「救急救命士の業務のあり方に関する検討会」の報告書がまとまりました。報告書では、除細動について「心室細動の第一選択治療として迅速性が強く求められる処置」と明記され、業務拡大に向け講習の実施だけでなく、米国で有効性と安全性が高いとされ、多くの公共施設に配備されている新型の除細動器の導入を求めています。
 心停止患者に対しての気管挿管は2004年7月から認められます。気管挿管の病院実習では、30例以上の経験が必要で、自治体が認定する救急救命士に限定されます。病院実習の際には,患者に対する充分な説明と同意を求めています。
 いよいよ平成15年4月から日本においても、心臓突然死患者に対して4分以内の心肺蘇生法の実施、8分以内の早期除細動ができる救急体制が実現します。心臓突然死の原因は心室細動であり、1分遅れるごとに10%救命率が減少します。一般市民は、すぐさま救急車を呼び、救急車が到着するまで、ひたすら心臓マッサージだけを行うことが今後の救命手段になります。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1038件、団体54件の合計1092件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
  FAX: (078)441-2149
  URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
  mail: mail@hyogohsc.or.jp

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