健康ニュース 2003年2月9日送付 発行部数 1144件
**********************************************************************

<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

**********************************************************************

▼【TOPニュース】

・スペースシャトル・コロンビア号になかった危機回避の勇気ある決断
 2月2日に起こった空中爆発事故原因の解明に際し、打ち上げ時の断熱タイルの破損の瞬間が鮮明な映像として捉えられていました。この映像と過去のデータからから起こるべき危険を予知し、危機回避に向けた勇気ある決断を下せた責任者がいなかったのかと思えてなりません。亡くなった7人の宇宙飛行士を英雄として褒め称えたとしても、残された家族の悲しみを癒すことはできません。
 事故後の米国政府は、宇宙開発の中断ではなく、逆に減額されていた宇宙開発費を増額し、更なる前進を国民に誓いました。日本人の心情とは異なり、悲劇の後には「愛国心」の元に一体となれる米国人の国民性があります。宇宙開発が人類の幸福につながるとした世界プロジェクトに命をかけた宇宙飛行士に哀悼の意を表するとともに、宇宙飛行士から発せられた世界平和を願う「人類愛」、地球環境を守る「地球愛」のメッセージの灯火が消えないことを願っています。

---------------------------------------------------------------------

▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−介護の心は、『自立自尊』
兵庫県立健康センター 所長
河村 剛史

 現在の日本は、男女とも世界一の長寿国で、世界の最高齢者も男女とも日本人である。先日、テレビで114歳の女性最高齢者の姿を見たが、2日間寝て目覚めるという不思議な人で、食の本能は維持されており、寝ながらでも口に食べ物を持ってくると口を動かし、おまけにお茶も飲む様子が報道されていた。すごい生命力であるが、ただ生きている姿です。人間の心臓は120歳までは拍動し続けることができるが、身体を支える筋肉を常に意識的に動かし、筋力を維持する努力をしなければせいぜい80歳までしか筋力はもたないのである。
 人間の自然死には、2つの死に方がある。ひとつは心臓死である。心臓の心拍の歩調とりの役目の洞結節の機能が加齢とともに低下して(洞機能不全という)突然に心拍が停止する。もうひとつは、免疫機能が低下して、肺炎で死亡するか、がん(天寿がんという)で死亡するかである。
 人間は立って死ぬことが出来るだろうか。歴史上の人物として名高い武蔵坊弁慶の最後の姿を思い浮かべる人が多いと思う。文治5年(1189年)に衣川の館で、追い詰められた源義経を守るべくお堂の前に仁王立ちになり、次々と放たれる矢を身に受けながら押し寄せる敵をにらみつけ、敵を寄せ付けなかった修羅の姿である。医学的には立って死ぬことは不可能であるが、こうした物語が生まれた背景には人間としての「尊厳のある死に方」への願望が込められている。
 尊厳のある死に方は、自尊心のある生き方であり、よく生きることがよく死ぬことである。健康づくりは単に病気にならない予防策ではなく、死ぬ直前まで立ち上がり、好きな時にどこでも自由に行ける筋肉づくりと思う。人間として生きることは"立つこと"である。これが、「自立自尊の道」である。天寿を全うするとは、長寿の意味に捉えがちであるが、天から与られた命の最後の一片まで使い切る、生きる執念であり、生への執着心があればこそ死の瞬間を悟ることができると信じている。
 自然界においては、動物が歩けないことは死を意味する。人間は生まれてから立ち上がれるまで親の助けが必要である。2本足で立つには多くの姿勢起立筋群の協調運動の日常訓練が必要である。いかなる病気になっても立ち上がる努力を怠ってはならない。たとえ要介護者になっても本人に立ち上がる執念と気力がなければ、介護は死に向かう道であり、生に向かう道にはならない。介護される側と介護する側がともに介護の心の支えとして、"立つこと"と"立たせたい"のキャッチボールが必要である。
 兵庫県立健康センターが推奨している脊椎ストレッチウォーキング法は、膝を伸ばし、踵から地に付け、背筋を伸ばして歩く歩行スタイルで、平成14年から健康づくり県民運動「毎日歩こう。背筋を伸ばして、今のあなたにもう1000歩」として兵庫県下で展開している。脊椎ストレッチウォーキングの日々の実践が、『自立自尊』の生涯を全うする手段であり、誰にでもできる健康づくりである。
 私は、死の時を悟った時、渾身の力を振り絞って立ち上がり、「ありがとう」と叫んで死にたいと願って、毎日の35分の歩行通勤に脊椎ストレッチウォーキングを行っている。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

---------------------------------------------------------------------

▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・高尿酸血症の食事指導に出てくる「プリン体」について
 プリン、ピリジンは、芳香族異種環状塩基と言われ、細胞の核内に存在するDNAの遺伝情報の配列の基本単位であるアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の基本骨格になっています。したがって、人間が食べ物として摂取しているものすべての動植物の細胞に存在します。人間は、プリンと結合したプリンヌクレオシドである、アデノシンとグアノシンをいくつかの反応過程を経て、尿酸として尿から排泄します。
 よくビールの飲みすぎは、痛風になると言われますが、確かにビール内にはプリン体が含まれてますが、食事からの摂取量と比べればわずかな量です。しかし、尿酸は尿酸塩として尿中に排出されますが、アルコールは尿酸の排出を抑制することから、体内に尿酸が蓄積することになります。男性に高尿酸血症が多いのも、アルコールそのものが原因であるためです。
 高尿酸血症の方は、食べ物の種類を選ぶのではなく、カロリー摂取過剰にならない注意が必要で、尿酸の排出を妨げるアルコール摂取を控えることが食事療法のポイントになります。

--------------------------------------------------------------------

▼【兵庫県立健康センターの話題】

・2月からメンバー対象の「生活習慣病指導管理プログラム」をスタートしました。
 生活習慣病治療のための医師による運動・栄養処方(生活習慣指導管理)に従って、その具体的指導と効果判定を継続的に行う体制を整えました。生活習慣の見直しには時間がかかります。経験のある専門スタッフが個人個人の身体状況を把握した上で、個人個人にあったメニューを提示します。火曜日から土曜日の毎日の午前、午後の2回(土曜日は午前のみ)に少人数制指導教室を開催します。

---------------------------------------------------------------------

▼【兵庫県内の話題】

・兵庫県加西市は、4月から公用車を含め公共施設内の前面禁煙をスタートしました。
 本年5月1日から施行される健康増進法では、第25条に公共施設などでの受動喫煙の防止措置を義務づけられています。加西市では、市役所、学校、公民館などの公共施設67ヵ所と公用車145台のすべてを4月から全面禁煙することを宣言いたしました。行政機関がまず、範を示す時期に来ています。
《健康増進法》第2節受動喫煙の防止、第25条「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」

---------------------------------------------------------------------

▼【兵庫県外の話題】

・平成14年の交通事故死者数は8,326人で、前年より421人の減少しました。
 交通事故の死者数が一番多かった昭和45年(1970年)16,765人と比べれば半減しました。しかし、交通事故のは発生件数は80万件を超え、負傷者数も110万以上となり、以前増加傾向にあります。
 「交通戦争」と呼ばれた昭和45年に交通安全基本法が制定され、小学校から交通安全教育として横断歩道の渡り方、自転車の乗り方などの交通ルールが教えられています。平成6年からは自動車学校では運動技術の習得と交通ルールの教育に加えて、交通事故に遭遇した場合のドライバーの責任として心肺蘇生法を始めとする応急処置の講習がなされています。 こうした交通安全教育は、「お互いに交通ルールを守ることにより個人の安全(命)が守られている」という観点に立ったものであり、見方を変えれば、「お互いの命を守るための社会ルール」を学ぶ大切な教育と再認識すべきものと思います。

---------------------------------------------------------------------

▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1090件、団体54件の合計1144件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

**********************************************************************

 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
  FAX: (078)441-2149
  URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
  mail: mail@hyogohsc.or.jp

**********************************************************************


Copyright (C) 2004 Hyogo Vitual Health Science Center