健康ニュース 2003年4月1日送付 発行部数 1162件
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<本号の目次>
▼ 新年度挨拶
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い
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▼【新年度挨拶】
・今こそ、「一身独立、一国独立」の時
平成15年度は、デフレ経済、イラク戦争など先行き不透明な中でのスタートになりました。医療費の3割負担も開始されます。こういった状況であればこそ、明治維新の時に書かれた福沢諭吉先生の「学問のすすめ」の中の「一身独立、一国独立」の精神的理念を国民が再認識するチャンスと考えます。「自分の健康は自分で守る」ことは、自らの身体の状態を知ることであり、自らの命を感じて生きることです。
兵庫県立健康センターは、「健康は自らを知る生きる喜び」、「長寿の道は、『自立自尊』」を旗印に、生活習慣病予防に対して運動・栄養・休養面から生活習慣の見直しを指導する日本の中核施設を目指しております。個人個人の家族歴・生活習慣・身体分析に基づいた生活習慣病管理指導プログラムを処方し、各専門スタッフが定期的に指導することにより、個々の自然治癒力を最大限に引き出し、身体からの“心地よさ”を感じてもらいたいと願っています。
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▼【連載特集】
「あなたは愛する人を救えますか」―脊椎ストレッチウォーキングの勧め
兵庫県立健康センター 所長
河村 剛史
日本人の平均寿命(平成12年)は、男性77.7歳、女性84.7歳であるが、WHOの健康寿命では男性71.4歳、女性75.8歳で、日本はいずれも世界一の長寿国である。平均寿命と健康寿命の差が、寝たきりを含む要介護生活期間ということになる。国民生活基礎調査(平成10年、11年)によると、65歳以上の寝たきり(31万6000人の集計)の原因は、38%が脳血管障害、15%が"しだい弱り"13%が転倒骨折、10%が痴呆によるものとされている。寝たきり予防の第1は脳梗塞予防であるが、姿勢維持と歩行のための筋力を鍛える日常の運動習慣が必要である。
健康長寿であるためには、まず、好きな時に自由に行動できる身体的活動力を維持してなければならない。その健康づくりの基本は、正しい姿勢で歩くことである。背筋を伸ばし、膝を伸ばして、踵から地に着ける脊椎ストレッチウォーキング法は、高齢者に多く見られる腰椎障害、膝関節障害の予防になり、全身の筋肉を鍛え、無理のない余分な脂肪を燃やす有酸素運動としても最適である。
NHK大河ドラマの宮本武蔵が書き残した「五輪書」がある。「水の巻」には兵法の姿勢と足の運び方の記述があり、まさに脊椎ストレッチウォーキングそのものであることに驚いた。「首筋を真っ直ぐに、背筋をしゃんとし、尻を出さず、腰がかがまないように、くさびを締める」「あごは少し出す感じ」「足の運びは、つま先を少し浮かして、踵を強く踏む」などと書かれている。達人の太刀の構えは、不偏不動かつ自由闊達(かったつ)な姿勢、まさにバランスのとれた静止から瞬時に繰り出す自由な動きである。この中で「くさびを締める」とは、帯をひねって腰を締めることであり、お腹を引き締め、胸を張り出すことになる。日々の心がけとして、「日常の身を兵法の身とし、兵法の身を日常の身とする」と書かれており、日常から堂々たる姿勢であることを求めている。兵庫県立健康センターが推奨する脊椎ストレッチウォーキング法は、常に首筋、背筋、腰筋を伸ばす姿勢を意識した歩行スタイルで、大河ドラマにあやかり、剣術の達人の武蔵が会得した極意の1つであると自慢している。
96歳の女優、演出家である長岡輝子さんの姿を拝見し、その著書「老いてなお、こころ愉しく美しく」の通り、また、テレビ、ラジオにて宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の岩手弁の朗読を聞き、人生の究極の輝きを感じ、かくありたいと思いを新たにした。この健康の秘訣は、女優という職業柄、常に姿勢に気をつけているとのことで、直立不動の姿勢を維持できることが、腹の底からの深みのある声が出せるものと思った。
85歳の女優、森光子さんは、平成11年12月に「放浪記」の1500回公演を達成し、同一俳優の最多公演記録を更新中である。舞台では今日も"デングリ返し"をするのか、焼き芋を一本食べるのかが観衆の注目の的になっている。この驚異的な体力維持の裏には、毎日、朝にエアロバイク(6分半)、夜入浴後にストレッチ体操、スクワット(相撲の蹲踞)を噂では150回行っている筋力維持の努力の賜物で、まさに役者魂である。
常に姿勢を正した動きは、矍鑠(かくしゃく)とした長寿者の理想像であり、充実した人生を生き抜いた証でもある。人生80年時代を生きる世代に必要なのは、生きがいを見つける努力よりも先に、80歳にして2本足でまっすぐに立ち、好きな時にどこでも行ける「自由度」を持つことが「長寿の道は、『自立自尊』」の生き方である。われわれには80歳の姿を夢みて今から姿勢を正す筋肉を鍛えておく心がけが求められる。
続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。
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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】
・早朝高血圧は脳・心臓血管疾患の危険信号
心臓突然死、心筋梗塞、脳卒中は朝方に、特に起床後2時間までに起こりやすいことは疫学的に知られています。この背景には、人間の生体リズム(サーカディアン・リズム)が関係しており、就寝時の副交感神経優位から起床後活動による交感神経優位の状態になり、早朝に血圧の上昇が見られます。朝、起床後1時間以内で、排尿後、朝食前、服薬前に座位で上腕での血圧が持続して収縮期血圧135/拡張期血圧85mmHg以上の場合を早朝高血圧と定義されています。
高血圧患者に対しては、家庭での血圧測定は朝と就寝直前の2回測定することが望ましい。特に、糖尿病などの他の危険因子を持っている高リスク患者は、早朝血圧を135/85以下にコントロールすることが脳・心臓血管疾患の予防につながります。早朝高血圧の方は、就寝前に深層水(マグネシウムの補給)200ml飲むことをお勧めします。マグネシウムは天然のカルシウム拮抗薬と言われ血圧を下げる効果があります。更に血液をサラサラにする効果も一石二鳥です。
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▼【兵庫県立健康センターの話題】
・第26回日本医学会総会シンポジウム「突然死をいかに減らすか」において河村剛史所長が心肺蘇生法普及について講演します。
4年に一度開催される日本医学会総会(平成15年4月4日〜6日、福岡)においてようやく心肺蘇生法について講演する機会を得ました。兵庫県において心肺蘇生法の普及啓発「あなたは愛する人を救えますか」を開始して以来、15年目にしてようやく日本においても心肺蘇生法の市民普及の重要性が認められたものと喜んでおります。
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▼【兵庫県内の話題】
・兵庫県立粒子線医療センターが4月1日から待望の陽子線治療の一般診療を開始しました。
現在,粒子線治療の対象になるは、頭頸部(鼻やのど,口の中,唾液腺など),肺,肝臓,前立腺の4臓器で、一ヶ所に限局したがんです。従来、早期がんは外科手術による摘出が原則でしたが、今後、身体的侵襲度の少ない粒子線治療の選択肢が選べるようになりました。天皇陛下の前立腺がんに対しては粒子線治療より外科手術が選択されました。
現在は,健康保険適応になっていない自由診療のため,治療費は約300万円となります。兵庫県は治療費の貸付制度を行っています。詳しくは、当センターのホームページ( http://www.hibmc.shingu.hyogo.jp/ )をご覧ください。
・兵庫県医師会主催によるAED指導者講習会の開催
昨年度に引き続き今年度も兵庫県の2次医療圏(10医療圏)ごとの医師会員を対象にAED指導者講習会を行います。平成18年(2006年)の「兵庫のじぎく国体」開催までに競技開催地の管轄医師会を中心としたAED300台体制による救命体制を確立するための一環事業です。来るべき一般市民によるAED使用のための講習会の開催準備も兼ねています。
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▼【兵庫県外の話題】
・平成15年4月1日から待望の救急救命士の医師の指示なし除細動がスタートします。
平成15年3月26日付け官報に「救急救命士施行規則の一部が改正する省令」が載りました。救急救命士法施行規則の第21条の第1項第1号「半自動除細動器による除細動」が削除されました。しかし、平成4年度からの救急救命士制度のスタートから10年経過しましたが、救急救命士が配備されている地方自治体は60%程度で、未配備の地方自治体では早急な救急救命士体制の整備が求められています。
・平成15年3月27日の衆議院予算委員会のAED(半自動除細動器)に関する質疑の議事録を兵庫県立健康センターのホームページに掲載しました。
ホームページ( http://www.hyogohsc.or.jp/ )の掲示板の項をクリックしてください。質疑の中で兵庫県立健康センターの河村医師の活動についても紹介されました。
・第65回日本循環器学会(平成15年3月27日〜30日、福岡)では、循環器専門医の間でAEDの関心が高まっておりました。
展示会場にて10ブースを使って循環器医師を対象に、一次救命処置(BLS),AEDを使った二次救命処置(ACLS)の講習会が2日連続午前午後に行われました。講演会場の5ヶ所には、展示を兼ねたAEDの配備がなされており、多くの医師がAEDの実物を手にとって見ることができました。講演会場では、医師向けの心肺蘇生法セミナーと市民を対象とした心肺蘇生法の市民公開講座が開催されました。
1980年以来、米国心臓協会(AHA)が心肺蘇生法の世界普及を行っていますが、今回の学会は、心臓突然死対策としてAED普及、心肺蘇生法の市民普及を前面に押し出した記念すべき学会となりました。今後、循環器専門医が中心となった展開を期待しています。
・平成15年夏ごろまで、日本の航空会社の国際線、国内線にAEDが装備されます。
すでに日本航空の国際線にはAEDが装備されていますが、全日空においても一気に国内線、国際線にAEDを装備することを予定しています。日本航空も国内線にも配備されます。新幹線内のAED配備のニュースはありません。現時点では、日本において安全な場所は飛行機の中ということになります。
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