健康ニュース 2003年8月28日送付 発行部数 1259件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・一般市民のAED使用許可に向けて大きな一歩前進
 日本循環器学会AED検討委員会委員長であり、慶応義塾大学心臓病先進治療学教授の三田村秀雄氏と河村剛史兵庫県立健康センター所長の連名で、国の第3次構造改革特区として「非医師による自動除細動器を用いた救命推進」を提案し、兵庫県を特区として認める要望を提出しました。これに対して厚生労働省は、第1次回答(7月28日)では、措置分類C「特区とし認められない」でしたが、第2次回答(8月8日)では、措置分類Bに見直され、特区の措置ではなく、全国的にAEDを使える方策を検討すると公式回答を得ました。
 一般市民はAEDを使用する条件として、1)医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得るこ とが困難であること。2)使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること。3)使用者がAEDの使用に必要な講習を受けていること。4)使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ていること。が示されました。
 今後、一般市民に対するAED講習会をどのように行うかにかかっています。いずれにしても、大きな一歩前進です。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」―AED普及県民運動「お互いの命を守る社会づくり」の提案

兵庫県立健康センター 所長
河村剛史

 米国心臓協会心肺蘇生法国際ガイドライン2000の基本理念は、「心室細動は、一般市民が救える唯一の心臓病である」との観点に立っている。AED普及の第一歩は、公的機関、集客施設、学校などに設置し、当面は、その管理責任者を対象にAED講習会を開催することになるが、将来的には心肺蘇生法と同様に誰でもAEDを使用できなければならない。幸いに、医療技術の進歩によりAEDは、一般市民が使用できるレベルの簡便かつ安全な医療機器であり、たとえ、間違って心室細動以外の人に使用しても、AEDの心室細動自動認識装置が反応しない安全な機器である。
 米国シカゴのオヘア空港には、AEDが60-90秒以内に取りに行ける場所に設置されている。1999年6月1日から2001年5月31日までの2年間に、空港内で21例の心停止患者が発生し、18例(85%)が心室細動であった。この内、16例に対してグッド・サマリタン (AEDの訓練を受けていない 旅行者、空港職員 ら)がAEDによる除細動を施行し、AED訓練者が行ったのは2例のみであった。1年生存率10例(56%)の結果が報告されている。
 ここで注目してもらいたいのは、グッド・サマリタンの存在である。グッド・サマリタンは、「よきサマリア人の教え」と言われ、善意で行った行為に対しては罪にはならないという米国の慣習法であるが、むしろ米国民が人命救助を積極的に行う人間愛の精神基盤となっている。16年前に日本で心肺蘇生法の普及啓発を始めた時に作ったキャッチコピー「あなたは愛する人を救えますか」による日本人に対する問いかけは、「命の教育」が日本人の共通基盤になければ心肺蘇生法は普及しないと考えたからである。
 今後のAEDの普及啓発においても、心肺蘇生法の「意識の確認」が最も大切な啓発ポイントになる。極端に言えば、目の前で人が突然倒れ、意識がなければ、全員にAEDの電極パドルを傷病者の胸に貼り付け、AEDの音声指示に従えばよいのである。誰もがパニックに陥っている時に、AEDからの音声指示はパニックを沈めるだけでなく、適切な救命処置が行われることになる。もし、心室細動であれば、AEDから「通電が必要です」、「患者から離れてください。通電ボタンを押してください」の音声指示があり、除細動ボタンを押せばよいだけである。心室細動でなければ、AEDは「除細動の必要はありません」と音声で知らせる。この場合には、心室細動以外の原因で意識がないと判断し、救急車の到着を待つだけの時間的余裕が生まれるのである。
 AED普及県民運動は、「お互いの命を守る社会づくり」を目指した社会の「安全・安心」の基盤となる意識啓発の絶好の機会である。1990年から5年計画でスタートした心肺蘇生法県民運動「命を大切に、あなたも心肺蘇生法を」を通して、兵庫県民は「心肺蘇生法」という名前を知ったように、まず、AED普及県民運動にて「AED」という名前を知ることが第一歩となる。当面は、AED講習会を受講した一般市民が現場での除細動を行うことになるが、将来的にはすべての一般市民が心肺蘇生法を行うようにAEDにて除細動を行う社会常識が理想である。そのためには、米国のグッド・サマリタン精神に代わる社会理念の醸成が必要である。
 AED普及県民運動の戦略として、中学校、高等学校の保健体育の授業に心肺蘇生法教育にAEDの社会理念を組み入れた積極的な「命の教育」が有効な手段となる。そのために、まず学校内にAEDを設置し、「生徒、教職員の命を守る学校づくり」からスタートすることが、将来のグッド・サマリタン精神醸成の布石となる。AED普及啓発は、法令にて単に施設内にAEDの設置義務が課せられることではなく、AEDを通して一般市民の「お互いの命を守る社会づくり」の啓発教育である。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・女性の心臓突然死の3大危険因子は、高血圧、糖尿病、喫煙です。
 最近の米国の循環器専門誌「Circulation」にNurses' Health Studyの登録者121,701人の20年間の追跡調査の結果が発表されました。この間に、244人の心臓突然死が発生しました。この内、病院外発生が89%、家庭内発生が51%に見られました。心臓突然死の原因については、男性と同じで、現場心電図の76%が心室頻拍、心室細動でした。
 発症の危険因子の分析では、94%に高血圧、糖尿病、喫煙の内の少なくとも1つを持っており、高コレステロール血症、家族歴、肥満などの危険因子の影響は少ない結果が見られています。喫煙に関しては、最も危険率が高く、過去の喫煙は危険因子になっていません
米国においても、女性の心臓突然死の発症率は男性の30%で少ないが、60歳以下で、家族歴に心筋梗塞、心臓突然死が見られる女性は、60歳以上の女性より心臓突然死の発生が多く見られています。
 コレステロールに関しては、意外にも米国においても心臓突然死の危険因子にはなっていません。むしろ、60歳以上では心臓突然死の発生が少なくなってています。このことは、60歳以上の高コレステロール血症の積極的な治療は必要ないことの証明でもあります。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・第4回兵庫県医師会健康スポーツシンポジウム(兵庫県医師会・兵庫県立健康センター主催)が、8月21日(木)、県下の健康スポーツ医をはじめ200名余りの参加者が集い、健康センター横のコープ生活文化センター大ホールで盛大に開催されました。
 河村剛史・兵庫県立健康センター所長(兵庫県医師会健康スポーツ医学委員会委員長)による「スポーツ時の安全管理:中高年者の運動時高血圧について」、高階經和・臨床心臓病学教育研究会会長による「長寿健康法ーいまを生き抜き、年は後で取ろう」の2本の講演の後、会場を巻き込んでの活発な討論が行われました。

・全国的にも例のない水難事故救助法実技セミナー(健康スポーツ関連施設連絡協議会・兵庫県立健康センター主催)が、8月24日(日)、26日(火)、27日(水)の3日間、県立健康センターにおいて、県下のフィットネスクラブのインストラクターなどが参加して開催されました。
 1日10名に受講者を限定し、全員が技術を習得できるまで何時間でも徹底的に訓練するという方式に、参加者はみな真剣に取り組み、大きな成果をあげることができました。実技セミナーの模様は、平成15年8月27日の午後17:30〜18:00のNHK「もっともっと関西」に紹介されました。

・「心肺蘇生法普及500人講習会」のお知らせ
 9月6日(土)午後2時より、健康センター3階体育ホールで開催します。講演「あなたは愛する人を救えますか」のあと、実際に人形を使って実技の練習を行います。どなたでも参加可能ですので、ご家族、ご友人などご一緒に参加してください。参加費は無料です。

・『プール水難事故救助法実技セミナー』のお知らせ
 9月より、内容を一新して、毎月1回定期開催いたします。年内は、9月21日(日)、10月26日(日)、11月30日(日)の3回、いずれも、AM10:00〜15:00、定員各10名、受講料10,000円です。くわしくは兵庫県立健康センターホームページをご覧ください。

・ABC放送の救急特別番組「救急医療〜あなたは愛する人を救えますか〜」の放送のお知らせ
 西川きよし氏との一時間トーク番組です。ABC放送 9月6日PM14時〜15時、RSK放送(岡山地方) 9月7日 PM14時〜15時、RCC放送(広島地方) 9月7日 PM16時〜17時に放送いたします。

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▼【兵庫県内の話題】

・脊椎ストレッチウォーキング大会の開催のお知らせ
主催:兵庫県医師会および健康スポーツ関連施設連絡協議会
開催日時:
1)9月23日(火・秋分の日)「脊椎ストレッチウォーキングin三田」
  9:30〜受付、10:30開会(13:00頃終了)
  会場:県立人と自然の博物館ホロンピアホール
  講演「生活習慣病とウォーキング」ほか
  申込み、問合せは、スポーツクラブNAS三田(079−559−2351)またはスポーツクラブNASウッディタウン(079−565−5700)
2)10月19日(日)「脊椎ストレッチウォーキングin明石」
  9:00〜受付、10:00開会(12:30頃終了)
  会場:明石市生涯学習センター(明石公園内)
  講演「なぜ運動が必要か」ほか
  申込み、問合せは、明石市医師会(078−918−0751)

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▼【兵庫県外の話題】

・第51回日本心臓病学会市民講座「突然死は救える」の開催
日時:2003年9月7日午後13:30〜16:30分
場所:東京国際フォーラム ホールC
プログラム:
 基調講演1 「突然死はなぜ起こるか」
  杉本恒明(日本心臓財団会長・東京大学名誉教授)
 基調講演2 「倒れた人を見たら、まず何をすべきか」
  河村剛史(兵庫県立健康センター所長)
 パネルディスカッション「市民は救命の主役になれるか」
  三田村秀雄(慶応義塾大学医学部教授)
  飛鳥田一朗(東京慈恵会医科大学客員教授)
  樋口範雄(東京大学法学部教授)
  中島正治(厚生労働省医政局医事課長)
  陣内貴美子(スポーツキャスター、ヨネックス所属)
 コーディネーター
  南砂(読売新聞東京本社編集局解説部次長)
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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1205件、団体54件の合計1259件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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