健康ニュース 平成11年12月9日送付 発行部数 392
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<本号の目次>

▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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<本文>
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▼【連載特集】
「あなたは愛する人を救えますか」その5−心肺蘇生法は「あいさつ」−
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

  兵庫県内において本格的に心肺蘇生法の普及啓蒙活動を始めた1998年(平成元年)の頃,日本において人命救助法の一般市民への普及は主に消防局救急隊員が,また養護教諭,スポーツ関係などの専門集団には日本赤十字協会が中心となって講習が行われていた.アメリカ心臓病協会(AHA)の心肺蘇生法の指導マニュアルがあり,世界各国でこれに従った指導法を行っているのに,なぜか日本では各団体が勝手な解釈をして独自の流儀ともいうべきやり方で指導していた.何より不思議だったのは,人命救助法の市民普及は人工呼吸法の指導であって,心臓マッサ
ージは日赤指導員の訓練を受けていなければやっては行けないと言っていたことであった.要するにこの頃は,水難訓練法の一環として市民指導が行われており,心臓突然死に対する心肺蘇生法ではなかったのである.「日赤では一般市民は心臓マッサージをしては行けないことになっています.先生だからといって勝手に心臓マッサージを教えていいのですか?」と言われたこともあった.こんな時,「では,目の前に愛する人が心停止になった時,あなたは資格がないから心臓マッサージはしませんでしたと言うのですか」と答えることにしていた.
 当時,医師が病院を出て一般市民に心肺蘇生法を教えること自体が非常に珍しく,マスコミも私の活動をよく取り上げたこともあって心肺蘇生法が注目されるようになった.兵庫県教育委員会が学校教職員の指導を私に全面的に任せたこと,地元姫路の消防局の協力もあって心肺蘇生法の市民普及は順調な滑り出しとなった.また日赤も平成4年度から一般市民に心臓マッサージを教えるように方針を変えた.
 1987年(昭和63年)12月に貝原知事が心肺蘇生法の講習会を見学された時,『兵庫県ではすこやかな社会づくり,心豊かな人づくりが県民運動になっているが,何をもってその心を県民に伝えられるのか.私はその答を知っている.それは,目の前に人が倒れた時,すぐさま「たいじょうぶですか」と声をかけられる県民が100万人いればすばらしい県になります』と話したことがきっかけとなり,平成2年度から5年計画で100万人に心肺蘇生法の講習を行う県民運動「命を大切に,あなたも心肺蘇生法を」がスタートすることとなった.市民による心肺蘇生法の普及率と心臓突然死の救命率の関係を見ると,住民全体の2割以上の普及率で救命率の向上が見られるとの報告があり,兵庫県民540万人の約2割の100万人を達成目標としたのである.平成6年度までに108万人の講習を達成することができた.平成5年度からは,毎年,高等学校教育にて約6万人,救急隊員により約9万人の心肺蘇生法講習体制が確立できたが,兵庫県の普及活動の特徴は,県教育委員会が教育現場で積極的に取り組んだことにある.県教育委員会の依頼により,私は高等学校の養護,保健体育教諭を中心に平成5年度から3年間で5,548人に講習を行い,ついで各学校で70,650人の伝達講習が行われた実績が,平成5年度からの生徒への心肺蘇生法教育の原動力となった.
 シアトル市を世界一救急体制の整った都市にした「心肺蘇生法の父」と言われているレオナルド・A・コブ博士を,1994年(平成6年)2月に神戸で開催された第2回全国救急隊員シンポジウムに招待講演でお呼びする機会を得た.この折,コブ博士に「心肺蘇生法の心とは何ですか?」と禅問答のような質問をしたところ,「それは,挨拶だよ」と答えられた.アメリカでは,見知らぬ人でも目と目が合ったら,反射的に「ハイ!」などと小声でつぶやきながら,一瞬笑みの表情を表す挨拶の習慣がある.目の前で人が倒れたら,反射的に「大丈夫ですか?」と声をかけるタイミングが同じなのである.見知らぬ人にはできるだけ目が合わないように歩いている日本人には,もともと苦手な習慣である.そもそも挨拶は,顔見知りの人,特に目上の人に対する礼儀として教育されているからだ.
 試合中に突然倒れたバレーボールのハイマン選手は,マルファン症候群(先天性の結合組織の異常)による胸部大動脈瘤の破裂が起こったためで,緊急手術でも助からなかった瀕死の状態であった.すぐさま声をかけ,反応がなければ,すぐさま大声で「救急車!」と叫ぶには,「意識がなければ命が危ない」との危機意識の教育と日頃の挨拶の習慣性が日本人に求められる.

 続く

 バックナンバーにつきましてはセンターホームページ資料ボックス
http://www.hyogohsc.or.jp/box/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・寒くなると気になる血圧!
 寒くなると気になるのが血圧です。この血圧のわが国の判定基準が、WHO/ISHの変更に伴ない本年(1999年)2月に変更になったことはご存知でしょうか。WHO/ISH基準及びわが国の判定基準は
http://www.hyogohsc.or.jp/etc/BP.html
の通りです。
 基準が厳しくなった原因は、血圧が低いほど心筋こうそくや脳卒中になりにくいこととが判明したことと、これまで加齢に伴ないある程度の血圧の上昇は仕方ないと考えられてきたのが、近年、徹底した減塩とカリュウム、カルシュウム、食物繊維の摂取及び禁煙により高血圧症を予防し、加齢に伴なう血圧の上昇をかなり押さえることが出来ることが解ってきたからです。
 高血圧はサイレントキラーとも呼ばれる、最も注意しなければならないリスクファクター(危険因子)の一つですが、生活習慣の見直しにより予防及び改善がかなり期待出来ます。

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▼【センターの話題】

・ 第23回(2001年)日本健康増進学会に向けて(ご挨拶)
 平成13年秋に開催予定の第23回日本健康増進学会長を兵庫県立健康センター所長河村剛史がお引き受けさせていただくことになりました。平成13年度は厚生省の健康づくり指針「健康日本21」のスタートの年度であり、兵庫県立健康センターにおきましても創立目に当たり記念すべき年度でもあります。
 20年前にスタートした健康づくりの基本概念としての健康増進の啓発普及は、健康づくりの大切さの意識を高め、世界一の長寿国となりました。しかしながら、21世紀の少子高齢社会において生涯現役長寿を目指すには従来の生命長寿から健康長寿の新しい概念に基づいた健康づくりが求められており、生涯現役社会の実現には急増する生活習慣病予防対策を包括的に行う新しい生活習慣病予防センターの設立が求められます。
 今回の大会の開催方針として以下の事を計画しています。
1 従来の健康増進対策から生活習慣予防対策に観点をかえ、運動・栄養・休養の生活習慣からの見直しを専門に行う生活習慣病予防センターのあり方を論議していきたい思います。
2 生活習慣病予防に関与する医師、運動指導士、管理栄養士、保健婦に発表と議論の場を提供し、従来の健康増資施設中心から大学、病院、医師会、健康施設、介護施設に広く呼びかけを行います。
3 大会運営の基盤として情報機能を充実し、インターネット、コンピュータプレゼンテーション、動画音声によるマルチメディアを活用いたします。
4 可能であれば、新しい生活習慣病予防学会の発足の契機になればと思っています。

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▼【兵庫県内の話題】

・ たばこと健康に関するWHO神戸国際会議(平成11年11月14日〜18日開催)が兵庫県で開催されました。
 会議の発表内容等は
http://web.pref.hyogo.jp/tobaccowho/
の「プログラム」からPDFファイルで詳しく知ることができます。

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▼【兵庫県外の話題】

・平成11年12月4日付けの讀賣新聞朝刊によると・・・。
 東京都が次年度から「基本健康診査」で「要指導」と判定された人を対象(10万人規模)に担当の医師を決めて半年間、個別指導を行う制度を新設することになった。1回目は生活習慣の聞き取りと食事や運動などの健康管理法を説明し、2回目で個人に合った減量や禁煙などの目標値を設定し、半年後にどれだけ改善したかを評価する。対象者は無料で、都が費用の3分の2、市町村が3分の1の負担をし、東京都は次年度予算に6億3800万円を計上した。

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 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人342件、団体約50件の合計392件の方々にご送付させていただきました。
 誠にお手数ですが貴メールアドレスへのメールマガジンの送付停止につきましては、下記の当センターホームページより削除依頼いただきますようお願い申し上げます。

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 ご意見、ご要望、記事等のご投稿につきましては、メール等でご送付いただければ幸せです。また、健康づくりに関するディスカッション、質問解決の場としてはメーリングリストを開設いたしております。併せてご利用下さい。

メール mail@hyogohsc.or.jp(hyogohsc@hyogohsc.or.jpにはリメールできません)
メーリングリスト http://www.hyogohsc.or.jp/maillist/frame.htm からhealth_for_all@hyogohsc.or.jp へ入会の上ご利用下さい。

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