Health for all (健康ニュース)Vol.53 2004年1月5日送付
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<本号の目次>
▼ 新年のご挨拶
▼ TOPニュース
▼ 連載特集 「あなたは愛する人を救えますか」
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い
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▼ 新年のご挨拶
・今年は、『お互いの命を尊ぶ』年になりますように
『命の尊厳』は、この世の中で自分の命を最も大切に思う心です。自分の命を大切に思えばこそ、他人の命を尊ぶことができます。『命』は地球生命体から授かったものです。自分の命を他人の命を守るために使うことが、地球生命体が『37億年の命』を得た極意です。
自分の命を捨ててまでも守らなければならないものは地球上には存在しません。イラクに起こっている自爆テロはなんら問題の解決にはなりません。『命』は生かして使ってこそ輝くのです。
AEDは、ノーベル賞を生み出したダイナマイトが、待ち焦がれていた人の命を救う究極の科学技術です。しかし、その技術は一人の研究者の卓越したアイデアではなく、医学と工学の分野の多くの研究者の努力の積み重ねで完成したものです。
しかも、AEDを生かすには社会の助けが必要です。他人の命を守る心がなければ、AEDは無用の長物です。AEDがあれば、目の前に人が倒れた時、「大丈夫ですか」と声をかける勇気さえあれば他人の命を救うことができます。
今年は、AED元年になります。同時に、日本人の『命の心』が試される年でもあります。
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▼ TOPニュース
・兵庫県立健康センターの新たな門出
兵庫県立健康センターは今年の3月末でコープこうべに民間移譲となり、県立としての業務は終了します。
昨年末に、兵庫県立健康センターが過去21年間にわたり積み上げてきた健康づくりのノウハウを生かすべく、兵庫県立健康センターの機能移転を県に提案させていただくとともに、今後の事業計画案を提出しました。
兵庫県立健康センターのフィットネス業務は終了しても、兵庫県民健康憲章の理念に基づき長年に渡り蓄積されてきた健康づくりのノウハウは日本のトップレベルであり、県民の皆様への健康スポーツの安全管理、超高齢社会への健康づくり、生活習慣病予防、介護予防に対する運動・栄養・休養面での専門的指導の中核施設は必要であると考えるからです。
兵庫県立健康センターが新しい環境で新たな機能を発揮できることが、健康づくりの新たな門出と考えています。
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▼ 連載特集
「あなたは愛する人を救えますか」−AED普及は日本の命の文化づくり
兵庫県立健康センター 所長
河村 剛史
厚生労働省の「非医療従事者による自動体外式除細動(AED)の使用のあり方検討会」の第一回検討会(平成15年11月18日)において最初のヒアリング講演の機会を得たことは、私にとって最高の喜びである。
構造改革特区の第3次提案「非医療従事者による自動体外式除細動(AED)の使用の容認」を受けて、今回の検討委員会が開催されることになった。当初、検討委員会のメンバーになることを期待していたが、構造改革特区申請者として各関連団体の委員の前で充分な発言の機会が与えられたことが、かえって私の主張が今後の検討課題になりよかったと思っている。
心肺蘇生法の普及を始めた頃は、心臓突然死という言葉はなく、一般市民も救急車を呼べば助かると思っていた時代であった。「目の前で愛する人が倒れたなら、4分以内に心肺蘇生法を行い、救急車の到着を待たなければならない」ことを強調したが、当時、救急救命士制度はなく、救急隊は専門的な心肺蘇生法を行いながら救急病院に出来るだけ早く搬送することであり、救急病院でも儀式的に救命処置を行うだけであった。
救急隊の救命講習会は、人工呼吸を中心としたプール開きの前の水難訓練が主な活動であり、心臓マッサージは特別な訓練を受けた人だけが出来る行為とみなされていた。当時、日本赤十字では、心臓マッサージは2日間の救命講習会を受講した人に許可されている特別な行為と見なされていた。
兵庫県の心肺蘇生法普及県民運動の特徴は、県教育委員会が中心となって学校教育の中で心肺蘇生法を通して「命の教育」を行ったことにある。岩手医科大学循環器センターが中心となって行った県民運動以外、他の都道府県は消防局や日本赤十字社などが中心となった普及活動であった。
学校現場においても、兵庫県のごとく、教師が生徒に心肺蘇生法の実技講習を行うのではなく、派遣された心肺蘇生法普及指導員により教師と生徒が同じ場で指導を受けているのが現状である。これでは、生徒に対する最も効果的な「命の教育」の教育手段を放棄していることになる。
米国心臓協会の心肺蘇生法国際ガイドライン2000では、心臓突然死の原因は心室細動であり、5分以内にAEDによる除細動が最も有効な救命手段であることが明記されている。一般市民のAED導入に際し、かつての心肺蘇生法の心臓マッサージのように専門訓練を受けた人しか行ってはいけないといった規制を設けてはいけない。学校教育にて生徒に「命の教育」を行うことが、将来の日本人"グッド・サマリタン"の育成につながると考えている。
心肺蘇生法の講習で最も大切なことは、「大丈夫ですか」と声をかけ、意識がなければ大声で「誰か来て」、「救急車を呼んで」、「AEDを持って来て」と叫ぶことが、大声で危機を知らせる訓練になる。救急隊が到着するまでは、医師であっても一般市民であってもAEDを使用する立場は同じである。
今後の講習会のあり方として、画一的な講習会でなく、多様な講習会が必要で、一般市民に対しては医師会が中心となって講習会を開催し、警察、警備員、施設管理者などは救急救命士、学校教育では養護教諭、保健体育教諭などは、それぞれ独自のプログラムで講習会を開催すればよいと考えている。
続く
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▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
・新しい病態概念「心臓・血管イベントの連続性」について
動脈硬化病変に始まり、高血圧→心肥大→心不全に陥り、心不全にて死亡する一連の病態には連続性があります。この病態の成因にはレニン・アンジオテンシン(RA)系が深く関与していることが最近の研究で明らかにされました。
RA系調節機構は、血圧を一定に保つ「生体の恒常性」の主役で、血圧低下をキャッチした腎臓からレニンが分泌され、アンジオテンシンにて血圧を上げ、副腎皮質からアルドステロンを分泌し、腎臓でのナトリウムの再吸収を高めて循環血液量を増やす機構とされてていました。
最近の研究では、アンジオテンシン受容体は腎臓のみならず血管、心筋細胞などにも存在していることが判明し、組織RA系といわれています。高血圧による心筋細胞の機械的な伸展にてアンジオテンシン受容体(AT1)は刺激を受け、心肥大や心筋繊維化を促進し、将来の心不全の前段階となります。アルドステロン受容体とともに心血管内分泌系として新しい学問展開が見られています。今後の高血圧治療の流れも、高血圧前段階からの臓器保護を目的とした降圧薬療法が注目されるようになります。
動脈硬化病変の始まりは、一般に酸化ストレスによるものといわれ、喫煙、高脂血症、肥満などの生活習慣が原因です。激しい運度も生体が処理しきれない多量の活性酸素を生み出します。
動脈硬化予防は、酸化ストレスの軽減であり、血管内細胞機能を温存することです。このためには、無理な運動は避け、脂肪を燃やす有酸素運動として脊椎ストレッチウォーキングを毎日の習慣とし、高齢になればなるほど脱水(特に夜間脱水)に気をつけることが誰でも実行できる予防の第一です。
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▼ 兵庫県立健康センターの話題
・朝日放送「おはよう朝日です」に河村剛史所長が出演します
平成16年1月7日朝7:20分過ぎ頃です。テーマは、「知られざるコレステロールの世界」です。
コレステロールが高いだけでは心筋梗塞にも脳梗塞にもなりません。喫煙、糖尿病、高血圧、肥満などの酸化ストレスに問題があります。コレステロールの中の悪玉(LDL)コレステロールが酸化ストレスにより酸化LDLに変化することが動脈硬化の原因です。
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▼ 兵庫県内の話題
・兵庫県の健康理念は、≪兵庫県民健康憲章≫から
兵庫県では、1982年(昭和57年)を健康元年と称し、今後の健康政策を展開していくとして、同年4月8日に健康科学シンポジウムを開催しました。この時に故須田勇元神戸大学学長から私案として提案された健康憲章をもとに、1985年(昭和60年)9月1日に兵庫県民健康憲章を制定しました。この健康憲章は、兵庫県立健康センターの設立理念となっています。
≪兵庫県民健康憲章≫
健康は、ひとりひとりが自分に応じて伸ばすもの。
それは生きがいを生みだす《いずみ》、明るい暮らしと社会を築く《いしずえ》。
私たちは、恵まれた自然、豊かな文化、活力ある兵庫に生き、心とからだの健康づくり運動を目ざし、《きょう》そして《あす》へのために、この憲章を定める。
1.健康は自分が進んで守り、高めるという自覚を持とう。
2.自分の健康を正しく知り、次に続く世代のためにもよい生活習慣を身につけよう。
3.個人から家庭、学校、職場、地域社会へ健康づくりの輪を広げよう。
4.互いに協力し、快適で住みよい環境をつくり出そう。
5.心身ともに健やかに、生まれ、育ち、暮らし、美しく老いることができる《健康福祉社会》を実現させよう。
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▼ 兵庫県外の話題
・ACLS(二次救命処置)講習会が学会を中心に各地で開催される
日本循環器学会は、昨年の3月の第67回日本循環器学会総会から本格的に心肺蘇生法普及、AED普及に乗り出しました。
循環器会員全員が心肺蘇生法のトレーニングを受け、医師、コメディカル、一般市民に対する指導者になること、循環器専門医は標準的な二次救命処置(Advannced Cardiovascular Life Support, ACLS)を習得して、循環器救急医療におけるチームリーダーになることとを掲げています。
各地の循環器学会地方会単位でもACLS講習会が開催され、平成16年度からの研修医必修化を控え、医師間にACLS技術の習得がブームのごとく急速な勢いで広まっています。
今後、医師が先頭に立って行う医師主導の心肺蘇生法の普及が各地で見られることを期待しています。
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▼ お願い
このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1183件、団体54件の合計1237件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
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兵庫県立健康センター
〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
TEL: (078)441-2234
FAX: (078)441-2149
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