Health for all (健康ニュース)Vol.54  2004年2月6日送付
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  <本号の目次>
  ▼ TOPニュース
  ▼ 連載特集 「あなたは愛する人を救えますか」
  ▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
  ▼ 兵庫県立健康センターの話題
  ▼ 兵庫県内の話題
  ▼ 兵庫県外の話題
  ▼ お願い

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  ▼ TOPニュース

・「兵庫県AED普及戦略2006」の提案
 2006年に開催される“のじぎく兵庫国体”では、公式競技および公開競技が県下のすべての市町で行われるのが特徴で、阪神淡路大震災の復興支援の感謝をこめて全県民が国体を支える「する、見る、支える」を標語に掲げております。
 しかしながら、近年の競技スポーツ中の死亡事故が散発している中、競技選手のみならず他県からの観客も含めて多数の参加者の安全管理の面からは、競技会場が全県にわたるために集中管理ができず、不利な条件になります。
 この不利な条件を有効に生かすには、これを機にすべての競技場において「AEDを中心にすえた救急体制」を確立するで、同時に全県規模のAED普及の好機と考えます。そのために県下の郡市区医師会が積極的に関与した体制づくりが必要です。
 兵庫県医師会では、各競技会場に出務する医師にAEDを携帯することを想定し、2001年8月から医師会員を対象にAED指導者講習会を開催し、現在まで392人のAED指導者と232台のAEDが個人用として購入されています。当初、2006年までの300台のAEDの購入目標であったが、目標達成間近です。
 そこで、「兵庫県AED普及戦略2006」の提案ですか、2004年度中には、一般市民のAED使用が認められAEDことから、まず、県下の小中高等学校にAEDを設置し、生徒の命を守る体制づくりからスタートします。2006年の国体開催時には、競技場の近隣の学校からAEDを貸し出すようにすれば、予算の有効かつ効率的な使い方になります。
 各競技場を管轄する医師会が中心となって競技会場の関係者や運営ボランティアを対象にAED講習会を開催すれば、緊急時の対応マニュアルの確認にもなります。山間部の競技会場で緊急事態が発生しても、救急ヘリコプターにて2003年4月に開設された神戸の災害医療センターへの搬送も可能です。
 兵庫県には、小学校858校、中学校403校、高等学校231校、高等専門学校2校計1489校があり、この構想が実現すれば、“のじぎく兵庫国体”に出務する医師の携帯AEDの台数も含めて1800台の「AEDを中心にすえた救急体制」が完成します。
 2006年“のじぎく兵庫国体”の開催を通して、兵庫県が日本のみならず全世界に「お互いの命を守る社会づくり」をアピールする絶好の機会と思います。

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  ▼ 連載特集

「あなたは愛する人を救えますか」−命は地球生命体から授かったもの
 兵庫県立健康センター 所長
 河村 剛史

 今、火星探査車スピリッツ号とオポチュニティー号が火星に水分が存在していることを確認するため探査中である。水分の存在こそが生命をはぐくむ"ゆりかご"である。
 137億年前に宇宙が誕生し、46億年前に地球が誕生した。36億年前に海中に生命(バクテリア)が誕生し、6億年前の脊椎動物の誕生を経て、200万年まえに人類が誕生し、現在、63億人の人間がこの地球上で生活している。
 地球上には多くの生き物が共存しており、この無数の生命維持の営みが地球環境を一定に保つ役割を果たしており、これを総称して"地球生命体"と呼んでいる。海水の塩分濃度や大気中の酸素濃度が一定に保たれているのも地球に生命が存在するからである。
 中学校での「命の教育」講演会では、講演の始めに「命は誰のもの」と生徒たちに質問をする。大部分の生徒は、「自分のもの」に決まっているではないかという顔をする。この質問を欧米の生徒にすると、ほとんどが「神のもの」と答える。私は、「科学者の立場から"地球生命体"のもの」と答えている。
 貝原益軒(1630年−1714年)の「養生訓」には、「人の身は、天地父母のめぐみをうけて生まれ、又養はれたるわが身なれば、わが私の物にあらず。天地のみたまもの」と書かれている。命は天地、すなわち"地球生命体"からの授かりものではあるが、授かった命を使って生きた人生は自分のものであるとも書かれている。
 命を授けた天地に感謝することは父母に感謝することであり、江戸時代の朱子学では親への孝行が主君への忠義、武士道となり、やがて、国に忠義をつくす軍国主義に変貌を遂げたのである。現在のイラクにおける多くの自爆テロは、自分の命は神のものと信ずればこそ神のために死ぬことができるのである。彼らを殉教者として崇められても、残された家族の悲しみは相手に対するもっと強い憎しみに増幅し新たな殉教者を生み出す土壌となる。
 命が"地球生命体"から授かったものならば、まず、自分の命をかけがえのない宝として大切にし、有効に生かすことが、世に誕生もしなかった多くの命に報いる使命である。自分の命を大切に思う心があればこそ、他人の命を尊び、他人の命を守る勇気が生まれるのである。だからと言って、自分の命を捨ててまでも守らなければならないものは地球上には存在しない。命は生かして使ってこそ輝くものである。
 心肺蘇生法の普及、さらにAEDの普及には「お互いの命を守る社会づくり」が社会の共通理念になければならない。この理念の醸成には、まず家族愛に訴え、隣人愛、職場愛、地域愛、社会愛、人間愛へと"愛"の輪を広げていくのが私の行動戦略である。
 先日、岸和田市で起こった中学3年生に対する1年半にわたる実の父親(40歳)と内妻による虐待事件は、社会を更に暗くするショッキングな事件である。虐待を受け、餓死寸前の子供を部屋に閉じ込めて内妻の子供と3人で一緒に生活している異常さには恐ろしさを感じる。まさに、映画「シンドラのリスト」に描かれたホロコーストの世界を思い起こす事件である。
 一家のマンションからは、子供を殴る物音や悲痛な叫び声、親のどなり声が頻繁に響き渡っていた。耐えかねて引っ越した住民もいたという。近所の人も叫び声を聞いても他人の家のことだからと無視をする無関心、無干渉社会が周囲に存在しているのも大きな問題である。虐待の兆候を感じ取れない児童相談所の職員の専門家としての資質も疑う。
 今の社会に蔓延しているのは、生活習慣病よりも恐ろしい無関心病であるかもしれない。「お互いに命を守る社会づくり」とは、社会全体が一人の命を守る監視体制づくりでもある。

 続く

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  ▼ 健康づくりワンポイントアドバイス

・脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、生活習慣病予防に重要な働きをします。
 脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵庫ではなく,さまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)を産生・分泌する巨大な内分泌臓器であることがわかってます。
 アディポサイトカインには、“善玉”といわれるアディポネクチンやレプチンなどや、“悪玉”といわれる腫瘍壊死因子(TNF-α)、レジシチン、遊離脂肪酸、PAI-1, アンジオテンシノーゲンなどがあります。
 善玉アディポサイトカインは、インスリン感受性を高めて糖尿病を予防し、血管内皮細胞に作用して抗動脈硬化作用があります。悪玉アディポサイトカインは、逆に糖尿病や動脈硬化を促進します。
 内臓脂肪の蓄積は一個一個の脂肪細胞が肥大化することを意味します。脂肪細胞が小型の状態では“善玉”アディポサイトカインが分泌されやすくなり、脂肪細胞が肥大化するに伴い“悪玉”が分泌されやすくなります。
 有酸素運動にて内蔵脂肪をエネルギーとして燃焼させることにより、肥大化した脂肪細胞が小さくなり、アディポネクチンの分泌量が増加します。逆に、血栓の原因の一つであるPAI-1の血中濃度が減少します。
 血中アディポネクチン濃度の増加によりにインスリン感受性は改善され、さらに筋肉運動にて血中ブラディキニン濃度の増加や筋肉内MAPKの増加によりブドウ糖の筋肉内取り込みが促進され、糖代謝機能の改善が期待できます。
 動脈硬化予防や糖尿病予防には、毎日、たとえ10分間でも脊椎ストレッチウォーキングを行うことが大切と言えます。

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  ▼ 兵庫県立健康センターの話題

・兵庫県立健康センターのお別れ“長寿健診”
 本年3月31日で兵庫県立健康センターは22年の歴史を閉じますが、運動負荷、血流検査、動脈硬化測定を中心とした“長寿健診”に受診者が殺到しており、3月19日の最後の健診まで予約が一杯となり、キャンセル待ちの状態になっています。
 2004年5月からの健康増進法の実施により、健康増進事業実施者は母子保健法から老人保健法、各種健康保険法、各種組合保健法などの規定する事業者に移りましたが、健康づくりの具体的な指導を行う技術的中核施設の役割を果たしてきた兵庫県立健康センターの閉鎖は政治の流れとはいえ無念と思っています。

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  ▼ 兵庫県内の話題

・平成16年度より兵庫県AED普及啓発活動が開始されます。
 平成16年度は全健康福祉事務所25施設と県立スポーツ施設18施設にAEDを設置します。河村剛史兵庫県立健康センター所長が専門職を対象に今後の一般県民のAED普及指導者養成を行います。
 県医師会のAED指導講習会では300名を超える指導者が誕生しており、“2006年のじぎく兵庫国体”に向けての体制づくりが一般市民のAED普及につながるものと思います。

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  ▼ 兵庫県外の話題

・厚生労働省の「非医療従事者による自動体外式除細動(AED)の使用のあり方検討会」の進捗状況
 第2回検討会が平成16年1月22日に開催されました。
 ヒアリングでは、1.日本における心臓突然死救命体制の現状と今後(慶應義塾大学医学部心臓病先進治療学教授 三田村 秀雄)2.NPOセントジョンアンビュランスジャパン協会の活動(NPOセントジョンアンビュランスジャパン協会理事松井 道宣) 3.海外事例に見る早期除細動の効果と装置の安全性について(レールダルメディカルジャパン(株)マーケティング部マネージャー 藤井彰二)の3者の講演がありました。
 討論においては、非医療従事者のAED使用条件の「使用にあたり医師を探し、医師がいない場合」の条件項目が、必須条件か、努力義務かの議論や講習内容について委員の意見がわかれました。前回のヒアリングで河村兵庫県立健康センター所長の意見のように、規制緩和の方向、職種に応じた講習内容が解決の方向と思います。
 第1回、2回議事資料や第1回議事録に関しては、厚労省医政局(http://www.mhlw.go.jp/topics/#isei)に掲載されています。

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  ▼ お願い

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1176件、団体54件の合計1230件の方々に送付させていただきました。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考え電子ジャーナルを発行してまいりました。インターネットにつきまして、未熟な我々が電子ジャーナルを発行できましたのも、ひとえに皆様方のご理解と、ご協力の賜物と感謝いたしております。

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   兵庫県立健康センター
    〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
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