Health for all (健康ニュース)Vol.57 2004年7月20日送付
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<本号の目次>
▼ お詫び
▼ TOPニュース
▼ 連載特集 「あなたは愛する人を救えますか」
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県内の話題
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▼ お詫び
・兵庫県立健康センター閉館(廃止)後サーバ再構築に時間を要し、十分なアナウンスなく、4月から6月9日までの間一切のサービスを停止いたしておりました。サービス停止に伴い、電子ジャーナルにつきましては3月31日送付のVol.56を最後に休止いたしていたしておりましたが、この度ようやく兵庫バーチャル健康科学センターを開設し、準備が整いましたので再開させていただきたく存じます。
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▼ TOPニュース
・AED(自動体外式除細動器)の一般市民への普及に向けて
今年の7月1日に厚生労働省通達により、一般市民によるAED(自動体外式除細動器)の使用がついに解禁になりました。
その通達内容は、欧米の「グッド・サマリタン」(よきサマリア人の教え)にならい、たとえAED講習会を受けていなくても一般人がAEDを使用してもかまわないとの見解が出されました。
また、特定の機関、団体による画一化されたAED講習会ではなく、各種団体が独自の企画によるAED講習会でよいことになりました。一般市民に対しては、できれば従来の心肺蘇生法の講習会に加えて、AEDの取り扱い講習を積極的に受講することを要望しています。
AED普及県民運動は、「お互いの命を守る社会づくり」を目指した社会の「安全・安心」の基盤となる意識啓発の絶好の機会です。
1990年から5年計画でスタートした心肺蘇生法県民運動「命を大切に、あなたも心肺蘇生法を」を通して、兵庫県民は「心肺蘇生法」という名前を知ったように、まず、AED普及県民運動にて「AED」という名前を知ることが第一歩となります。
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▼ 連載特集 「あなたは愛する人を救えますか」−日本人が気づかない「命の教育」のあり方
財団法人兵庫県健康財団 理事
河村剛史
2004年6月1日に起こった長崎県佐世保市の大久保小6年御手洗怜美さん殺害事件は日本中を震撼させた。当初は加害者が同級生の女児(11)であったことに驚いたが、次第に新聞紙上で明らかにされた事実は単なる発作的犯行ではなく、計画的殺人であった。しかも、殺害方法も背後から目隠しをして右頚動脈をカッターナイフで切断し、死んでゆく様を見届けるという残忍さであった。今回の殺害事件には、学校内で同級生を殺し合う小説「バトル・ロワイヤル」の影響を受けたとも言われているが、架空の世界と現実との区別がつかない精神状態の未熟性も感じる。
こうした事件が起こるごとに社会は「命の教育」の重要性を訴えるが、実際にどのような具体的な教育が必要なのかを真剣に討論し、実行に移されているとは思えない。こうした事件の背景には、現在の社会世相が反映しており、学校教育だけに問題があるのではなく、日本人一人一人が無関心であってはいけない行動の時期に来ている。
過去に心肺蘇生法の実技講習のために訪問した学校は約400校になるが、この中で有数の大学進学校である高等学校の校長先生から「生徒から教えられたことがある」と教育者として反省の意を込めて話されたことを思い出す。
当時(15年前)、3年生で学業トップの女子生徒が進路相談を受けた際、将来、看護婦(師)になるために看護大学に行きたいと希望を述べた所、担任の先生は「君のような優秀な人は、医学部に行ったほうがよいのではないか」と反対した。母親も看護婦になることを反対した。その理由は、母親が看護婦で、仕事のしんどさを一番知っており、娘がよりによって同じ道を進むことに反対したのである。
女子生徒は、周りの説得にもかかわらず自分の意思を貫き、学校推薦により看護大学に進んだ。推薦入学の書類の中で彼女が書いた看護婦を目指す動機は、有名大学への合格数ばかりを考えていた先生たちに本来の教育のあり方を教える内容であった。
小学校5年生の時、母親に連れられて武者行列を見に行った時の思い出が書かれていた。目の前に通りがかった武者が突然、倒れた時、母親が自分の手を振り切って武者に駆け寄り、心肺蘇生法を必死に行っている母親の姿を見た。この時、大勢の群集の中で母親が何を武者に行っているかは理解できなかったが、心の中に「お母さんはすごい人である」との印象が深く刻み込まれた。この時から「将来、お母さんのようになりたい」と心に決め、学業に励み母親と同じ道を選んだのである。
母親は、看護職に徹するがゆえに家庭は父親との共同作業で、運動会、参観日も勤務を代わってまでも参加することはなく、子供にとって良い母親でないと常に自責の念を常に抱いていた。病院の婦長(師長)であった母親に娘さんの志望理由を話した所、子供から自分にとって天職である看護職をこのような形で理解されていたことを知り、感激のあまりその場で泣き崩れた母親の喜びの姿があった。子供にとって親は最も身近な大人の社会人であり、社会を見る窓口である。教えられなくても他人の命を救おうと必死の母親の姿を見たことが「命の教育」であった。
兵庫県立健康センターで毎年行っていた心肺蘇生法500人講習会に親子連れ(2,3歳の幼児も)で来てほしいと訴えていた。親が真剣に心肺蘇生法の訓練を受けている時、子供は親の傍を離れず真剣に親のやっていることを眺めているものである。時には、一緒になって心肺蘇生法の真似をする幼児もいる。こうした環境づくりも「命の教育」と考えている。
続く
バックナンバーにつきましては下記アドレスからご覧いただけます。
http://www.hyogohsc.or.jp/liblary/journal/journal.html
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▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
・コレステロール低下薬(スタチン)はユビキノン(CoQ10)の合成も抑える。
高コレステロール血症は動脈硬化の原因であり、虚血性心疾患の危険因子として見なされ、コレステロールを下げるスタチン系薬剤は世界および国内での売り上げがNo1となっています。
専門的になりますが、コレステロールは肝臓においてアセチルCoA→メバロン酸→ファネシル2リン酸→→→コレステロールの代謝を受けて合成されます。スタチン系薬剤はアセチルCoA→メバロン酸の経路を阻害する薬剤です。
メバロン酸の産生を抑えることは、もう一つの重要な代謝経路であるファネシル2リン酸→ユビキノン(CoQ10)の合成も阻害することになります。
ユビキノン(CoQ10)は、細胞内のミトコンドリア内でエネルギー(ATP)を産生する電子伝達系の不可欠な構成成分で、これが不足するとエネルギー産生が低下し、細胞のエネルギー代謝の低下が起こります。
ユビキノンは日本において医薬品として25年以上前から心臓疾患の治療(1974年)、筋ジストロフィーの治療、歯肉疾患、歯周病の改善、乳がん、パーキンソン病の予防などに使われていましたが、米国では、医薬品のみならず栄養補助食品として10年以上販売されており、その間特に副作用は報告されておらず、高い安全性が認められています。
ユビキノンの合成量は、加齢に伴い減少し、臓器の機能低下や免疫力の低下を来たすと言われています。また、ストレスや肥満などでも減少します。
日本においても2001年から栄養補助食品として販売され、細胞の若返り食品、化粧品として関心が高まっています。
ユビキノンが細胞活性を高める若返り薬ならば、逆にスタチン系薬はユビキノンの合成を抑える老化薬ということになります。
高コレステロール血症、年齢以外に危険因子を持っていない人に対して動脈硬化、心筋梗塞予防のための予防的スタチン系薬剤の投与は今後、見直される時期に来ていると考えます。
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▼ 兵庫県内の話題
・兵庫県における保健師に対するAED指導講習会のスタート
県健康福祉センターに25台、県立スポーツセンターに18台設置します。県下9医療圏を含む10ヶ所において各会場あたり20人の県職保健師のAED指導者講習会を開催し、今年度は全県下の約1000人の市町保健師に伝達講習を行います。指導は河村剛史兵庫県健康財団理事が県下を巡回指導を行います。
・兵庫県医師会主催第5回健康スポーツシンポジウムのお知らせ
日時:8月26日(木)午後14:00〜17:00
場所:ラッセホール
神戸市中央区中山手通4-10-8 TEL: 078-291-1117
演題:
1.「急性冠症候群の予防と治療」
住吉徹哉(榊原記念病院副院長)
2.「AEDを使用した心肺蘇生法」(実技講習)
河村剛史(財団法人 兵庫県健康財団理事)
・(財)兵庫県健康財団主催のAED普及県民500人普及大会の開催のお知らせ
平成16年9月5日午後14:30〜17:00まで神戸総合運動公園グリーンアリーナ神戸体育館にて開催いたします。
河村剛史兵庫県健康財団理事が講演を行い、認定AED指導インストラクターである健康スポーツ連絡協議会所属のトレーナー30人が一般市民へのAED指導を行います。
参加申し込みは
http://www.healthy-life21.net/life_support/9_5.html
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兵庫バーチャル健康科学センター
URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
mail: mail@hyogohsc.or.jp
事務局:(財)兵庫県健康財団からだの健康部
〒652-0032 神戸市兵庫区荒田町2丁目1-29
TEL: 078-512-5075(代) FAX: 078-512-5095
URL: http://www.healthy-life21.net/
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