健康ニュース 平成12年1月1日送付 発行部数 394
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<本号の目次>▼ 新年のご挨拶
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い**********************************************************************
<本文>
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▼【新年のご挨拶】兵庫県立健康センター所長
河村剛史あけましておめでとうございます。
平成12年の新年を迎え、電子ジャーナル購読者の皆様には新たな決意を胸に刻まれたことと存じます。
2000年4月1日から介護保険制度がスタートします。今まで老後の面倒は家族が当然看るものと考えていた日本人にとって、公的介護の道が開けた画期的な制度です。しかし、最後まで自立することが人間の尊厳を保ちつづける道であり、寝たきりでは個人の尊厳は保てません。健康は社会が保証する権利ではなく、自らが守るものであり、次世代の子供に正しい生活習慣を伝える責任を1人1人自覚することが、人間の尊厳を最後まで持ちつづける生き方と考えます。
寝たきりを作らない社会づくりは、個人1人1人の健康づくりにかかっています。兵庫県立健康センターは寝たきり予防を目的に生活習慣病予防センターへの転換を計っているのはこのためです。---------------------------------------------------------------------
▼【連載特集】「あなたは愛する人を救えますか」その6−大声で助けを求める行為の中に命が見える−
兵庫県立健康センター所長
河村剛史阪神・淡路大震災では,多くの人々が倒壊した家屋の瓦礫の下から救い出された.私の母親も助け出された一人であるが,「瓦礫の下で身動き出来なかった2時間の間,もし近所の人の声掛けがなければ,死ぬより恐ろしかった」と話していた.多くの救出例の中に,倒壊した家から抜け出した人が,瓦礫の下にいる自分の母親に必死に声を掛けたが反応がなく,そうこうしている内に隣の人の救助の声が聞こえたために自分の母親ではなく,近所の人とまず隣の人から救助したとの話しがあった.今回の大震災では,倒壊した家屋から必死の思いで抜け出した住民同士が瓦礫の下に埋もれた残された家族に必死に声を掛け,声の応答があった人から優先して救出にあたった.こうした震災現場で住民の行為は,「まず助かる人から助け出す」という災害医療での“トリアージ”の概念が自然の形で行われていた.別な言葉でいうと,大災害は命の集団的危機であり,その場の限られた力の中では,多くの死に瀕した命の中
から助かる可能性のあるものから救助の優先順位を決定せざるを得ないのが現実である.
それに反して,心肺蘇生法の世界は,平穏無事な環境の中で,目の前の人が突然倒れるという倒れた人の個人的危機である.心肺蘇生法による救命行為には,単に心肺蘇生法を行うだけでなく,正しく行われているか見守る人,救急車を呼ぶ人,救急車を誘導する人,激励する人など,一人の命を救おうとする多くの人の助けが必要である.その為には,目の前で倒れた人の命の危機を周辺に知らせる人がいるかが命を左右すると言っても過言ではない.事実,目撃者による心肺蘇生法の救命率が一番優れている.心肺蘇生法の実技講習会の話しの中で,私が一番強調して
いる所である.
しかし,「空気と水と安全はただ」と思っている島国国家の日本国民には,これが一番難しいことなのである.安全神話に長年浸っていた日本人は,人との関わりを避ける気風が生まれ,事が起これば自ら行わなくても救急車を呼べば良いと考えている人が多い.アメリカでは中学校教育の中で,「目の前で人が倒れた時,すぐ隣の人が意識の確認をし,意識がなければ助けの人と救急車を呼んでいい」と教えている.こうした「命の危機管理教育」が行われていない日本では,目の前でひとが倒れても,意識を確かめるどころか周りを取り囲んでただ見ている行動パターンが多い.心臓突然死は,平常時に突然起こる個人の命の危機であり,いかに多くの周囲の人々が救命に参加,協力できるかが救命のポイントとなる.倒れた人の命の危機を感じ,必死に助けを求める人がいればこそ,周囲の人々はその必死の姿の中に倒れた人の命の危機を感じるのである.
最近は,中学校,高等学校の講演会で,「命の話し」をしてほしいと頼まれる事が多くなってきた.高校生はおとなしく私の話しを聞いてくれるが,中学生に90分間,それも「命の話し」をおとなしく聞かせるには大変である.姫路のある
中学校での講演会での話しであるが,私は壇上から生徒を観察しながら「あの生徒は,どの話しをしたら私語をやめて私の話しに耳を傾けるのか」と話しの攻撃をするのが私の講演の楽しみ方である.全校生徒450名の中で,最後列に私の話しには全く興味のないといったそぶりで,最後まで椅子にふんどりかえってみたり,右や左に顔を背けたりしていた生徒がいた.先生も気にしてしょちゅうこの生徒に注意していたが,全くかまい無しであった.私の話しの攻撃も効果なくお手上げであった.最後に,「君達に命とは何かを教えよう」と言って,壇上に用意していた訓練用人形で「人が倒れたらどうするか」,それはと言って「大丈夫ですか,大丈夫ですか」,「意識がない」,「誰か来て」と私が出せる最大の大声を張り上げた.その時,彼だけが「ハ,ハ,ハ,ハ・・・」が声を出して笑ったが,周りの生徒が誰一人笑わなかったので,声をすぼめ決まり悪そうにしている姿が見えた.講演の後,校長先生が私に感謝された一番はこの生徒の事であった.彼は学校の一番の悪で,彼をあおりたてる仲間もいて校長の最大の悩みであった.「今日は,自分だ
け違うという事を勉強いてくれました」「先ほど廊下ですれ違った時,どうだったと言ったら,うつむきました」「本当にありがとうございました」と意外な心肺蘇生法の教育効果に自分自身が驚いた.続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ資料ボックス
http://www.hyogohsc.or.jp/box/frame.htm
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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】・ インスリン抵抗性症候群
健康診断の血液検査で、1)善玉コレステロール値(HDLコレステロール)が40mg/dl以下、2)中性脂肪が150mg/dl以上、3)血糖値は正常値の上限で、ヘモグロビンA1cが5%台、この3つの条件が見られますと、その原因として膵臓からのインスリンの分泌が過剰の高インスリン血症が疑われます。更に、上半身肥満が見られる場合には、血中インスリン濃度の測定を行わなくても、「インスリン抵抗性症候群」の診断をつけることができます。
「インスリン抵抗性症候群」の人物像は、運動不足で、食事は不規則な方が多く、まさに生活習慣病の典型です。特に男性において心筋梗塞などの虚血性心疾患に罹る危険性の多いにもかかわらず、本人自身の生活習慣に対する自覚がなく、病気になって初めて気付くタイプが多いようです。
兵庫県立健康センターでは、心臓ドッグを行っており、特に「インスリン抵抗性症候群」の総合的な生活指導を行っています。---------------------------------------------------------------------
▼【センターの話題】・ パーソナルメンバー制
兵庫県立健康センターでは、平成11年4月からパーソナルメンバー制を導入し、現在まで190人の方が個人指導を定期的に受けています。学校のクラス担任に倣って7人の専門スタッフがメンバーの担任になり、定期的な面談を行い、健康度開発の状況をチェックし、週1回の専門スタッフ会議で担当メンバーの状況報告を行っています。長年慣れ親しんだ生活習慣を改めることは簡単には出来ません。ともすれば意欲低下しがちな心の緩みを、兵庫県立健康センターのスタッフは必死に支えています。個人の健康づくりは家族の健康づくりになり、次世代の正しい生活習慣を伝え
る絶好の場を提供しています。---------------------------------------------------------------------
▼【兵庫県内の話題】・ 兵庫県民健康憲章
兵庫県では1985年(昭和60年)に全国に先駆けて兵庫県民憲章を提唱しました。15年経った現在でもこの健康福祉社会は実現しておりません。兵庫県立健康センターはこの理念に基いて設立されたものです。初心に戻り、この健康理念の更なる啓発に邁進したいと思っています。
〈兵庫県民健康憲章〉
健康は、ひとりひとりが自分に応じて伸ばすもの。
それは生きがいを生みだす《いずみ》、明るい暮らしと社会を築く《いしずえ》。
私たちは、恵まれた自然、豊かな文化、活力ある兵庫に生き、心とからだの健康づくり運動を目ざし、《きょう》そして《あす》へのために、この憲章を定める。1.健康は自分が進んで守り、高めるという自覚を持とう。
2.自分の健康を正しく知り、次に続く世代のためにもよい生活習慣を身につけよう。
3.個人から家庭、学校、職場、地域社会へ健康づくりの輪を広げよう。
4.互いに協力し、快適で住みよい環境をつくり出そう。
5.心身ともに健やかに、生まれ、育ち、暮らし、美しく老いることができる《健康福祉社会》を実現させよう。---------------------------------------------------------------------
▼【兵庫県外の話題】・ 禁煙とダイエット
滋賀県警は、喫煙者と太り過ぎの警官1170人に対して本部長命令で「禁煙とダイエット」を指示する異例の健康増進作戦を始めた。滋賀県警の男性の喫煙率は約70%(全国平均55%)、肥満度指数の高い警官は約1割を占めており、現職警官の病死が最近、増加傾向にあることから異例の通達になった。兵庫県警でも全警官にカード式体脂肪計測計を配布し、太り過ぎ防止キャンペーンを行っているが、禁煙の通達は行われていない。滋賀県警本部長自ら禁煙を実行する範を示す決意がなければ実現できないことである。(平成11年12月17日、讀賣新聞より)---------------------------------------------------------------------
▼【お願い】このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人344件、団体約50件の合計394件の方々にご送付させていただきました。
誠にお手数ですが貴メールアドレスへのメールマガジンの送付停止につきましては、下記の当センターホームページより削除依頼いただきますようお願い申し上げます。http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
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