インスリンの作用がなくても、筋肉内へのブドウ糖の取り込みは可能である。

 


 インスリンの作用がなくても、筋肉内へのブドウ糖の取り込みは可能である

  インスリンによる糖取り込みのメカニズムは,インスリン受容体にインスリンが結合すると,IRS蛋白がリン酸化されてPI3-キナーゼとのカップリングが起こり,糖の輸送担体であるGLUT4が細胞膜表面に移行(トランスロケーション)して糖が取り込まれると考えられています。
  アンギオテンシンU(AII)受容体刺激がインスリン刺激と拮抗し,PI3-キナーゼ活性化を抑制,GLUT4の細胞膜表面への移行を抑制すると言われています。
  細胞での糖や脂質代謝の流れを調節する「代謝センサー」や「燃料ゲージ」とも呼ばれる酵素であるAMPK(AMP-activated protein kinase)は通常では運動や低酸素などで活性化されます。AMPKはGLUT4を細胞表面に移行させ、筋肉がエネルギーを作るために糖分を取り込んだり、脂肪を燃やす働きがあります。
  ビグアナイド薬(メトホルミン)はこのAMPKを活性化し「運動疑似効果」を通じて骨格筋および肝臓での脂肪酸酸化を活発にし、糖代謝や高脂血症を改善し抗動脈硬化作用を発揮します。
  内臓脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの働きの一つに、筋肉や肝臓にあるAMPKを活性化させる働きがあることが知られています。したがって、有酸素運動にて内臓脂肪を減らすことがアディポネクチンの分泌量を増やすことになります。
  運動のもう一つの効能に、血液中のブラジキニン濃度を高め、血管拡張により血圧を下げる効果があることは知られていますが、AMPKを高めGLUT4細胞膜表面に移行させる作用もあります。
  ACE阻害薬はレニン・アンギオテンシン系に作用してAUの産生を抑制するのみならず、ブラジキニンの不活性化を抑制して血中ブラジキニン濃度を増加させます。
 
  日本人は遺伝的にインスリン分泌量が少ない民族と言われています。
  メタボリック・シンドロームの治療方針としてインスリンに依存しない糖代謝改善を第1優先とし、軽度の節食と有酸素運動を基本にし、筋肉トレーニングを加える生活習慣指導が河村循環器病クリニックの治療方針です。
  もともと内臓脂肪の少ない人には、筋力トレーニングによる効果を観察し、ビグアナイド薬、ACE阻害薬を補助薬として使用することを考えています。

 
《詳細な説明》


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