身体の調子を整える細胞内ミネラルコンディショニング

 


 細胞内電解質は、“ミトコンドリアの海”。

  細胞外電解質ではナトリウム、細胞内電解質ではカリウム、マグネシウムが大部分を占めている。ATP産生機能を持つミトコンドリアにとって細胞内電解質(“ミトコンドリアの海”)が一定に維持されることが機能維持に必須である。

1. はじめに
  2007年7月世界陸上選手権大会で、末続選手ほか多数の日本人選手が痙攣を起こして不調を訴えたが、同じ環境でもなぜ外国人選手には見られなかったのか。
2008年1月4日の第84回箱根駅伝で、前年度優勝校の順天堂大学の小野選手がゴール前500mで痙攣を起こして動けなくなり、たすきを渡せず無念の涙を呑んだニュースもあった。
  これらの事件は、報道では脱水症として片付けられているが、単に水分と塩分(食塩)不足ではなく、細胞内エネルギー代謝に不可欠なマグネシウム摂取不足が真の痙攣の病態であることを知らなければならない。

2.細胞内電解質は、“ミトコンドリアの海”
  全身の組織細胞における生命活動の担い手は、細胞内に存在するミトコンドリア内で産生されるATPであり、この生命エネルギーがなければ細胞は死にいたることになる。
  突き詰めて考えれば、約18億年前に細胞内に進入し、酸素を利用した細胞内エネルギー産生を可能にしたミトコンドリアの細胞外環境を一定に保つ恒常性を念頭に置いた身体管理法が重要になってくる。
  人間の身体の最大構成成分は体液(水分)であり、成人男子は60%、乳児は73%、高齢者は45%を占めている。心臓を中心とした血液循環ネットワークがあり、70兆を超える組織細胞の一個一個は、毛細血管網を介した体液の組織潅流を受けている。


  一個の細胞は、細胞膜により細胞内外の電解質バランス(膜平衡)が維持されており、細胞外電解質ではナトリウム、細胞内電解質ではカリウム、マグネシウムが大部分を占めている。ATP産生機能を持つミトコンドリアにとって細胞内電解質(“ミトコンドリアの海”)が一定に維持されることが機能維持に必須である。
  陸上で生きていくために細胞環境を一定に維持する「生体の恒常性」機能があり、その代表が、腎臓でのナトリウム保持機能であるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)である。
  血液循環の意義は、毛細血管レベルでの組織循環により、最終的に細胞一個一個を体液で還流するシステムである。生物の進化過程から見れば、第一に酸素を利用したエネルギー(ATP)産生を行うミトコンドリアとの細胞共生がある。細胞膜を介した細胞内電解質の維持機能はミトコンドリア細胞の環境を一定に保つ必要がある。
次いで、生物が陸上生活を始めたことにより、細胞外(血液、間質)電解質を一定に保つ機構が必要になった。これが、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の発達であり、腎臓機能による細胞外電解質バランスの維持機構が登場した。
  細胞内ミトコンドリアが生命活動を行なうためには、日頃からマグネシウムの積極的な摂取を行い、細胞内電解質を維持する細胞内ミネラルコンディショニングが重要である。
  1972年に塩田法が廃止され、日本市場に出回る塩は、イオン交換樹脂法で産生された99%NaClが食卓塩として発売され、それまでの苦汁(マグネシウムその他の微量ミネラル)がまじった粗塩が市場から消失した。こうした国の政策から、その後の日本人は1997年に塩の専売法が廃止されるまで、慢性的なマグネシウムの不足に陥ることになる。
  ナトリウム過剰摂取の現在の食生活では、むしろカリウム、マグネシウムの積極的な摂取が必要である。マグネシウム摂取方法として海洋深層水、“にがり”を推奨する所以である。


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