1.内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満 通常、肥満は脂肪細胞に取り込まれた中性脂肪の蓄積により起こる。脂肪細胞の分布状態により、内臓に多い場合は内臓脂肪型肥満、皮下に多い場合に皮下脂肪型肥満と呼ばれる。 脂肪細胞に取り込まれた中性脂肪は、細胞内に存在するHSL(ホルモン感受性リパーゼ)によりグリセロールと遊離脂肪酸に分解され、遊離脂肪酸を血液中に放出させる。 ホルモン感受性リパーゼは、アドレナリンにより活性化し、インスリンは活性を抑制する。運動時には脂肪細胞から産生された遊離脂肪酸が適時、エネルギーとして供給される。 過剰な遊離脂肪酸は細胞毒(脂肪毒性)になるが、脂肪細胞により遊離脂肪酸の供給はないように細胞毒に適量に調節されている。別の見方をすれば、脂肪細胞は安全な脂肪貯蔵庫と言える。 2.異所性脂肪 エネルギー摂取過多と運動不足により生じた中性脂肪は、安全な脂肪細胞に貯蔵できなくなり、あふれ出した中性脂肪は肝臓、心臓、膵臓、筋肉などの臓器内細胞内に直接に蓄積するようになる。 細胞内に蓄積した中性脂肪は無秩序に遊離脂肪酸に分化され、過剰な遊離脂肪酸は細胞内ミトコンドリアを障害し、細胞死を起こす。 3.異所性脂肪による臓器障害 肝臓に脂肪が蓄積した脂肪肝は腹部エコー検査でよく見られるが、この中で肝機能ALT(GPT):30以上で、アルコール飲用のない場合を非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcholoc steatohepatitis:NASH)と言われる。 ウィルス性肝炎はウィルスが肝細胞を破壊するに対して、NASHは肝細胞に蓄積した遊離脂肪酸が肝細胞を破壊する。長期の障害により将来、肝臓癌になる可能性が高くなる。 心臓は遊離脂肪酸にて心筋の興奮性が亢進し、不整脈を誘発する。場合にとっては心室細動による心臓突然死の原因となる。 |
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