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乳酸は疲労物質ではなく、筋肉のエネルギー源である |
●筋肉で糖質が燃焼すると過程で乳酸が産生される |
運動生理学では、激しい運動では無酸素状態になり、ブドウ糖は謙気性代謝になり乳酸が産生されると言われてきた。 有酸素運動から無酸素運動へ移行する境界ゾーンをAT(Anaerobic Threshold 無酸素性作業閾値 )またはLT(Lactate Threshold:乳酸性閾値)と言われている。 |
1.AT(Anaerobic Threshold 無酸素性作業閾値 )またはLT(Lactate Threshold:乳酸性閾値) |
運動強度を上げて行くと、血中の乳酸濃度が急激に上昇する現象が見られる。従来の考え方では、糖代謝において、好気性代謝から嫌気性代謝に移行した変換点とし、AT(無酸素性作業閾値)と呼んでいる。 |
2.運動強度と酸素消費量 |
この図は、女子プロバレーボール選手7名に自転車エルゴ負荷を250ワットまで行い、経過中の酸素消費量を実測した結果である。 運動強度が増加するに比例して分時酸素消費量が直線的に増加するのが分かる。 ATを越える運動強度になっても酸素消費量は直線的に増加し、筋肉が無酸素状態に陥ってはいない。 |
3.乳酸トランスポーター |
筋肉線維には速筋、遅筋、中間に分けられる。速筋は瞬発力を発揮し、エネルギーは酸素を必要としない糖質である。遅筋は持久力を発揮し、エネルギーはミトコンドリアでの好気性代謝で、糖質、脂肪酸、乳酸を使う。 AT以下の運動強度では、速筋線維のグリコーゲンが産生された乳酸が乳酸トランスポーターにより遅筋線維に送られ、エネルギーとして消費される。 AT以上の運動強度からは、速筋線維も収縮に加わり、大量の乳酸が産生される。エネルギーとして使用されなかった乳酸が血中濃度が高まることになる。 同時に、アドレナリン濃度も増加しており、糖利用を高めている。 乳酸濃度は、糖の利用されている割合を示している。 乳酸は嫌気性代謝によって起こる老廃物ではなく、エネルギー源である。 |
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